話題:身近な死
9月6〜8日は、私が愛してやまない地元のお祭りです。
私は小学校の時から笛を吹くために昼の部はもちろん、中学に入ると夜の大人の部にまで参加してた。
本当にお祭り愛してる。
喧嘩祭りだから流血は当たり前。
私は喧嘩はしないけど、通行人を喧嘩の波や太鼓のバチから守るために体を張ったりするので、擦過傷や打撲は毎年の勲章(笑)
本当に楽しかった。
この祭りがあるから私は1年間頑張れる。
この祭りに笑顔で出て、近所のおじさんたちや隣の町内の祭り好きたちと楽しい酒を飲みたいから…
だから1年つらくても頑張れるんだ。
地元のヤンキーの方々も、祭りを通じて仲良くなれる(笑)
喧嘩の波に私がのまれたら助けてくれる(笑)
学校に行かず、警察のお世話になって粋がっている方々だって、祭りになれば正々堂々喧嘩できるわけだし、そのために近所のおじさんたちの言うことはしっかり聞いたりして…世の中捨てたもんじゃないなってすごく感じるお祭りです(笑)
うちの町内の笛の師匠は、完全に放任主義でね。
他の町内みたいに手取り足取り教えてくれたり、練習会開いたり…全然しないの。
「俺の笛を見て覚えろ。」っていう…技は教わるものではなく盗むものって考えてる感じ。
師匠の笛は神レベルのもので、他の町内の笛吹きおじさんたちと比べたってダントツ1位なんだけど…初めて笛吹く子どもたちにそんな神業見せて「見て覚えろ」なんて無理な話じゃん。指とか早すぎて見えんし。
私は小さいころから祭り好きだったし、たまたま基礎的なことは別のおじさんに習えたから、そこから自己流でアレンジして…師匠の見て…今に至るって感じだけど、他の子たちはそんな師匠についていけず、次々と挫折。
まぁ、私が教えればよかっただけの話かもしれないけど、放任主義が当たり前だったし、私も活発な子じゃなかったから(笑)そんな発想はなかったんだよねー後悔…。
それで…
7年くらい前からかなー?
引っ越してきて、いきなり私の町内で「俺がこの町内のお囃子を変える」とか言ってきたおじさんがいたの。
別に悪い人じゃなくて…
ただの祭り好きなんだけど…
太鼓も笛もできる人で。
そのおじさんはガッツリ練習会開いて、うちの町内の子たちに笛太鼓教えてた。
むしろ師匠と違ってスパルタで…子どもたちは泣きながら練習してた。
祭り当日も、笛吹く順番なんか決めたりなんかして…私の目から見たら、全然楽しそうじゃないなーって。
吹きたいときに吹く。
叩きたいときに叩く。
お囃子が途切れなければそれでいいじゃん。
部活じゃないんだから…
みんなが笑顔になる祭りなんだから…
そんな…ねぇ?
もっと楽しくやろうよ。
みんなが笑ってる祭りが、私は好きなんだけど。
私はそう思ってた。
何より嫌だったのは…
祭りでは町内ごとにお囃子が違う…っていうか、だいたい同じなんだけど、アレンジが町内によって違うの。
うちの町内は、元祖!っていうか、一番基礎のお囃子を極めた感じのやつなんだけど…
そのおじさんはね、自分が引っ越す前にいた町内で吹いてたお囃子を子どもたちに教えてて!
もうそれだけは本当に嫌だった。
お囃子を聞けばどこの町内かすぐわかる…そんなお祭りなのに。
うちの町内のお囃子を勝手に変えないで。
さんざん書いたけど、私たち仲良しだよ(笑)
そのおじさんが引っ越してきたとき、私はもう高校生だったから、別にわざわざ練習会とか行かなかったし(大御所気取り/笑)、おじさんとは友達感覚だったから別に怯えたりとかはしなかった。
人としては好きだけど、祭りに対しての考え方が違う。
そんな関係。
9月11日、そのおじさんが亡くなりました。
急性心不全。
8日まで一緒に祭りしてたのに・・・3日後にはこの世からいなくなった。
具合悪いって確かに言ってた。
でも笑って酒飲んでタバコ吸ってたから…風邪だと思ってた。
49歳だよ?
まだまだこれから私と張り合ってほしかった。
「お前、遠慮してるタマじゃねぇだろ(笑)」って今年の祭りのしょっぱなに言われた。
タマなんかついてないよって笑った。
おじさんの笛に合わせて、私も他町内のお囃子吹いちゃうこと、実はあったんだ。
でも今年は「私、今年はうちの町内のお囃子しかやりませんから」って喧嘩売った。
「俺も俺のお囃子しかやんないから」って喧嘩買ってくれた。
笑ってた。
8日の日だって、手振ってくれたよ。
実際のところ、私は音楽センスまったくなくて…
師匠から前奏を盗むことができなくて。
そんなとき、おじさんが「俺の前いた町内の前奏しか教えられんけど」って教えてくれた。
「この祭りは、過ぎゆく夏を惜しむ祭り。カナさんの笛はちょっと切ない感じがして雰囲気出てるんだよな。」って言ってくれた。
実は私の笛、もう15年使ってるから、単にヒビ入ってるだけなんだけどね。
私そろそろ太鼓覚えたいんですけど。
センスないって言われたけど、教えてほしいんですけど。
まだ口喧嘩したいんですけど。
お通夜の日…たまたま私は仕事が休みだった。
最後くらい、ちゃんと見送ってあげたい。
顔見てお別れ言いたい。
そう思って、新幹線で地元に帰りました。
そしたら…ね、
お母さん大激怒。
翌日仕事なのに帰ってくるとは何事か。
近所の人が亡くなったんなら、一家に1人出席すれば十分。
仕事なめんな。
そんなにお通夜に出たいんなら東京になんか行かなきゃよかったじゃないか。
それでずっと外見回して、いつでもお通夜行けるように準備してればいいだろ。
ふざけんな。
人様の命を預かる仕事なのに甘ったれんな。
そんな軽い気持ちで帰ってくるなら辞めちまえ。
だって。
私だって軽はずみで帰ったわけじゃない。
仕事が大切ってのもわかってる。
だからちゃんとその日のうちに帰れる新幹線予約した。
最後のお別れがしたいっていうのは…そんなに怒られることなのかな?
地元に就職しなきゃ、お通夜って出られないものなのかな?
よくわかんない。
結局、数珠や喪服やもろもろ…お母さんに借りなきゃいけないもの、貸してもらえなくて。
お通夜に出れないまま私は東京に帰った。
悔しすぎて電車で泣いた。
新幹線では嗚咽が漏れた。
お母さんが嫌いになった。
信じられないと思った。
もう…なんだろう、この気持ち。
それから私は仕事が嫌になりつつある。
私も悪かったけど…ね。
こんなの、あんまりじゃないか。