私のことを、人間は「雪女」と呼び怪談で妖怪として語る。

でも、可愛い名前もちゃんとあるんだ♪
大概の人間の女よりも、美しい容姿もある。

粉雪をキメ細かく織ったような白銀に輝くひやりと柔らかな肌。
上質な黒い絹糸を長く真っ直ぐに伸ばした艶々と豊かに滑らかな髪の毛。
切れが長く上品な、それでいて瞳は円らに輝く目。
細長く通った完璧なバランスと形の鼻筋。
キュッと赤く、適度に引き締まり程よく甘やかさもある唇。


私の食事は、主に人間の男の魂。
若く美しく生命力に溢れた男ほど栄養価が高い。
その他に、人間の男に愛され可愛がられることによっても、人間の女にとっての上質なコラーゲンとやらや豊富なビタミンとやらのように、私の体と肌を生き生きと輝かせる。
純粋な愛情に触れることも私のエネルギーを増大させる。


そうね、「若い男の魂を喰らう妖怪」


怖いかしら?
でも、人間だって人間以外の動物の肉を「タンパクシツ」と言って大事な栄養にしているでしょう?
私は、苦しませずに血も流させず、むしろいい夢の中で気持ちよくなって貰いながら魂を取り込むのよ?
人間よりも、ずっとエレガントな食事だと思うけどなぁ。



…あ…来たわ。
食べ頃ピチピチで美味しそうな魂の気配が私の狩場に。
それも2体も。


うふふ、早速向かわないと!



………………



「ふぅ…助かったな」
「えぇ、今のところは」

スキーで横道に反れ、私の吹雪と山小屋の罠にかかった私の獲物。

凄い、凄い上玉だわ!

「本当に誰も住んでいないのか?すぐにでも機能できるぜ、この小屋…家?」
罠を見回す青年は
褐色の艶々とした肌に、逞しくも均整の取れた長身。
何より、琥珀色のキラキラと力強く輝く瞳が際立つ精悍男前な顔立ち!

思わず湧いてくる生唾をゴクリと飲み干す。

「置いてあるパンも、まだ柔らかそうですね。あ、冷蔵庫までありますよ。チーズにベーコン、野菜も新鮮なままありますね」

同じくらいの年頃の青年。
黒曜石のような深い輝きの瞳を囲む切れの長い上品な形の目。それを囲む長い睫毛。
完璧に整った、人間が「神秘的な」と表現する、人間にしておくのが惜しい美貌。
スラリとしているようで、脱いだら逞しいことが判る素晴らしく鍛えられたカラダ。

お腹の虫が、グゥ…と食欲を訴える。

「まぁ、事情を伝えたら不法侵入で警察に突き出すのは完璧してくれるだろう。火を焚くぞ」

垂涎の精悍男前が、暖炉の薪に火をくべる。

「ベッドやお風呂やトイレもありませんし、民家として作られたものではなさそうですが。使われる頻度は高そうですね。誰が食料や燃料を補給しているのでしょう?」

食欲そそる神秘的美貌が冷静に辺りを見回して分析する。


垂涎の精悍男前が、野菜を使い調理し、食欲そそる神秘的美貌がパンにチーズやベーコンを挟んで、空腹を満たしながら、二人暖炉の側に寄り添う。

ピチピチの美味しそうな魂が、暖炉の火に照らされて艶やかに輝く。

たまらない。


そろそろ近付いてやる。