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十二国記カテゴリ追加します

雑食サイトですからね 


時おり、十二国記SSも書くようになります…(書きたい話もできたし)


最低でもタケちゃんを完結させてからにしますが…(おいタケシ何とかしてくれよ)

タケちゃん4

「うふふ、ありがとう。お家はこの近くなの?」
美少女は自然に泣き止んで、タケシに微笑みかけた。
一見すると、強気な態度か少し傲岸なくらいの言動が似合いそうな…言ってみればいわゆる派手顔なのだが、口調も仕種も、控え目で物柔らかだ。

見た目は大和撫子そのものっぽいが、キャラは肝っ玉母さんな直子と好対照である。
そのギャップで、かなりモテそうだな…(直子ちゃんもだけど…とあくまでタケシは直子一筋だが)と、ニッコリとして
「すぐそこですよ、僕のお家で少し休んでいってください」
とタケシは美少女の手を引いた。


事情を話すと、下町気質のタケシの母親は、ニッコリと美少女を迎えて濡れた服を乾かす間にと「ちょっと…いや、かなりガバガバだと思うけど着ておいてね」と、自らの服を体を拭く美少女に出した。
そして、甲斐甲斐しく美少女の制服にアイロンとドライヤーをあてがった。


「温かいお家ね。素敵だわ」
美少女…中沢美沙子と名乗った少女はニッコリとした。
「ありがとうございます。あ…僕は沢田タケシ、ちょっと越境して東京の東邦学園に行ってます。そこの三年生です」

!?


「あ…似てると思ったけど本当に沢田タケシ選手だったんですね!?あ…年上だったのにタメ口きいちゃってごめんなさい!!あの…沢田選手…時おりテレビで活躍を観ています」
美沙子が頭を下げた。
「あ〜、畏まらないでください。てゆーか、日向さんや若島津さんの方が注目されてますよ。あ…明和高校(美沙子が着ていた制服の高校だ)だったら、日向さんの弟さんが行ってますね、美沙子さんと同学年のハズですけどご存知ですか?」
タケシが謙遜しながら、慌てて話を逸らそうとしたら…

「日向くん…日向尊くんですよね…。お兄さんの小次郎さんのことは、とても活躍しているサッカー選手だということしか知らないですけれど…。私にとって日向くんというのは…日向尊くんのことなんです…」
美沙子の顔が切なげに…涙はもう出ていないのに、泣き顔のような表情になった

「あの…美沙子さん…もしかして…」

「うん、その日向尊くんにフラれちゃったんです」


切なさを隠しきれずに、無理に微笑む美沙子がとても儚げで…
愛しいとか抱き締めたいとかではなくて…(タケシにとって、その対象はあくまで直子である。それは揺るがない)
何か、柔らかくて軽くてふんわりと温かい大きな布地のものを…フワッとかけてあげたい気分になった。


尊くん…まぁ、恋愛は…どうしようもないこともあるよね…どんなに素敵なコでも対象に成り得ないことはあるよね、僕も…今どんなに素敵なコに告白してもらえるという幸運に巡り会えたとしても、直子ちゃん以外の女の子とは…だし…。あ〜…どうしよう…


直接、間接共に日向家の人々には振り回されるタケシだった…


しかし、尊くんは…他に好きな人がいるのかな?人それぞれ好みはあるし、美沙子さんでは違ったのかな?それなら仕方がないけれど…尊くんも美沙子さんも、素敵な人だしこれからいくらでも素敵な恋愛はできるとタケシは思うが…


尊に関して、二年ほど前から気になっていたことはあるのだ。
日向小次郎も心配していることではあるが…

その予感が当たっているとしたら、美沙子が尊を諦めるのはまだ早いように思えた。
尊のためにも、美沙子にもう少し頑張って欲しいように思えた。

「美沙子さん…尊くんのどんなところを好きになったのか…よかったら話してくれませんか?」


「うん、聞いてくれる?生徒会長だからじゃない、ましてや日向小次郎の弟だからじゃない。尊くんだってミス明和高校じゃない私を見てくれたと…思ったの、勘違いじゃなければ」

美沙子は、ポツリポツリと話を始めた


尊によってしかさせられないような、本当に、本当に…綺麗な顔をして…

タケちゃん3

中間試験直前で、部活が一時中止となる週間の週末…沢田タケシは、実家に1日帰省をすべく明和に着いた。

一応、体育科と呼ばれるクラスの、特別指定部在籍の生徒とはいえ、試験直前の決まりに例外はない。
インターハイもウィンターカップも、出場どころか優勝候補筆頭のキャプテン…こんな時でもなければ帰省ができない身だ。
両親に顔を見せにというのもあるが…また更に綺麗になってるのかな…と思う、尊敬する先輩の妹である日向直子の顔も見たいのだ。


東京もだったが…明和でも、雨がシトシトと降っていた。
それなりの大荷物を持ちながら傘をさすのはやはり邪魔くさい。スニーカーに、徐々に雨水が浸水してくるのも…体感不快指数を大幅に上げていた。

さすがのタケシも、強く疲労感を感じ、早く家に着きたいと思いながら歩いていた。


家まであと10分弱のところにある公園まで進んだ時だった…
「明和に入る前は、あそこでサッカーボール蹴ってたな」
と、いつ通っても懐かしく眺める公園…


「!?」


女の子が、雨の中…傘もささずにベンチに俯いて座っている。

地元の有名進学高校の制服だ。
顔は…俯いている上に、濡れ放題の長い黒髪に覆われて見えないが…
きちんと膝と踵が行儀よく揃えられた、長く引き締まった脚からして…今は肩を落として俯いているが、普段はとても姿勢がいいのであろうことが想像できる。

ガックリと落とされた肩から伸びている半袖から覗く腕は…やはり姿勢もスタイルもいいのであろうことを示していた。

それを差し引いても、こんな雨の中、女の子が傘もささずに俯いてびしょ濡れになっている姿は…放っておけなかった。
いくら、今日は少し蒸し暑いくらいだとはいえ…


「あの…風邪をひきますよ」
タケシはそっと傘を差し出した


驚いて見上げてきた少女の顔は…


泣き濡れて目が真っ赤に腫れてはいたが、華やかな美少女であることがハッキリと判った…

「ごめんなさい…こんなトコで1人で泣いてたら目障りよね…でも…もうちょっとだけ…」
途切れ途切れに、涙声で…美少女は、タケシに必死に微笑もうとしていた

「いえ…あの…何か辛いことがあったんですよね。そうっとしておいてあげた方がいいんでしょうけど…あの…目についてしまったので…」

タケシは、少女に傘をかざしてやり続ける

「ん…辛いっちゃ辛いね…。覚悟の上だったけど…。要するに失恋しちゃってさ!」

タケシの下心ない思い遣りに心をほぐされて、少し無理しながらも少女は本来のシャッキリとした姿勢を取りながら、ニコッと笑った。


失恋…こんなに…綺麗で可愛くて聡明で性格も良さそうな?
タケシは…不思議に思いながら更に続けた

「ここで出会ったのも何かの縁です。僕で良ければ話を聞きますよ。でも…その前に濡れた体を拭きませんか?」
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