小次郎、誕生日おめでとう。
もうとっくに自立しているどころか…お前に助けられてばかりの不甲斐ない私が、お前にあげられるものなんて、ないということは判っているけどね。
時折、ウチに帰ってくる度に、お前が食べたがる、桃の缶詰を送るよ。
死んだ父さんにサッカーボールをリクエストしたのを最後に、お前は、いっさい物をねだらなくなったね。
子供に物をねだられるということは、親にとっては、嬉しいことでもあるんだよ。困ったり心配の種になったりもするけどね。
お前が、早くから、弟や妹どころか、私のことまで守って助けようとしていた姿…
父さんが、10歳くらいだったら、そうしたかもしれないな…なんて、お前を心配しながらも、勝手に父さんを惚れ直してしまったよ。
だから、我が息子ながら、自慢なお前だけどね…
親として、してあげられることが少なかったことは…今でも残念に思うよ。
お前の役に立てるものを、贈ろうにも、私には既に思い付かないことを歯痒く思うけどね。
ねぇ、小次郎…お前を子供扱いしてるわけじゃなくてね、
お前のために、何かしらできることがあったらしたいと、お互い幾つになっても思うのが親心なんだよ。
お前は、人に甘えることができなくなっていることが心配だよ。
お前は見る目がちゃんとある。
信用できる人には、好意にちゃんと甘えなさいね。
お前は、頼りになる長男だけど…
私の可愛い息子だってことも忘れないでおくれ…
心配したり、頼りにされたりする権利を、私に残しておくんだよ。
母より