「先ずは、小次郎さん、真紀さん。ご結婚おめでとうございます。
そして、両家の皆さん、本当におめでとうございます。
皆さんご存知、WCに2度CFとして代表となり、ともに毎試合得点した日向小次郎と初めて出会ったのは、中学1年の春。
と、言いたいところですが。
一方的に、小学校6年生の夏に、全国少年サッカー選手権で会ってました(笑)。
本物のCFとはこういうものなんだなと…
県大会の決勝で武蔵に敗れるまで、自分がエースストライカーだと思っていた自分が恥ずかしかったものです。
日向さんにとっての僕との出会いで、僕にとっては再会だったのが、中学1年の、サッカー部での初練習でした。
最初は、仰ぎ見る、僕には雲の上の存在に感じていたんですけどね。
少しでも近付きたくて、正式な朝練の時間よりも早くグラウンドに来て自主練しようとしていた僕と、若島津さんと共に、ほとんど同じ時間にグラウンドに彼が来て…
「お前も練習時間が待ちきれなかったか!」
と、笑ってくれたんです。
それから、自然と一緒に自主練するようになりました。
サッカーの練習や試合、最低限こなさないといけない学校のテストや課題を共に必死になったのは勿論ですが。
一緒に、入寮生の歓迎会や誰かの誕生日のサプライズ企画を考えたり。
他愛もない悪戯を楽しんだり。
クラスメイトの誰が可愛いかをムキになって討論したり。
親しくしているクラスメイトや寮生や部員の他愛もない悩みについて、時にはちゃかし時には本人以上に悩み…
僕の青春謳歌に、常に日向さんは関わっていました。
彼女として、赤嶺…これからは日向となる真紀さんが紹介された時…
日向さんが、そんな、普通の中高生としての顔をしていたのを見て、僕はホッとしました。
やはり、ソフトボールのオリンピックで2度エースピッチャーとなったあなたも、普通の恋する女の子の顔をしていたことも、嬉しかったです。
共に、スター選手として高め合いながら、オフでは普通の若い男女であり得る関係が素敵だと思いました。
そんな二人が、長い友人付き合いから、恋人付き合い…そして、本日の結婚式に向かい、二人の友人として、この場でお祝いの言葉を述べられることを、本当に幸せに誇らしく思います。
今後のお二人の、ますますのご活躍と両家の幸せを祈り、このスピーチを締めさせて頂きたく思います」
パチパチパチ!!!!
盛大な拍手、そして感激屋な出席者の涙と共に、日向小次郎と赤嶺真紀の、結婚披露宴の新郎友人代表スピーチが締め括られた。
日向は、友人代表スピーチを、若島津に頼むかか反町に頼むかを随分迷ったのだが…
他ならぬ若島津が
「俺達が、普通の中高生らしい青春を謳歌できたのは反町のお陰なんだ。
俺も、結婚することがあったら、反町にスピーチを頼むよ。
第一、俺達の間で一番スピーチが上手いのは反町だろ?」
と、笑ったのが決定打になった。
「そうだな…」
ちなみに、数年前に、反町の結婚披露宴の友人代表スピーチをつとめたのは、小池だった。
小池の結婚披露宴では島野だった。
今年度、30歳を迎える、あの南葛との死闘を演じた、元東邦サッカー部の代表…。
未来に向けての展望を語り、実現に向けて意欲的に活動しつつも
2度と戻らぬ過去を際限なく懐かしく語ることもできる…
一番いい歳かもしれないな…
そんな話を若島津と共に語ったのだった。
「何だかんだで、婚姻届けの提出と結婚式を同日にやる手続きやら、会場のリーズナブルな抑えにも(日向は、どれ程高額年棒貰うようになっても節約マニアだった)協力してくれたし…あいつには頭が上がらねえな」
日向が苦笑した。
「…それに関しては、別に頭を下げる必要はありませんよ。
大体、日取りを7月26日に押した時点で、しっかりちゃっかりしてます」
「??」
「7月26日は、反町の誕生日です。
日向さんの結婚記念日と被せることで、自分の誕生日を覚えやすくさせようとしたんですよ!」
……
「……今年だけは……あいつの誕生日を忘れたフリしてやろうか」
「はい、みんなにも連絡済みです」