日向小次郎は、年頃の男である。
美人を見れば振り返るし、クラスメイトの女の子に対して「可愛いな」と思う瞬間もある。
新体操部やバトン部の女子のレオタード姿や華麗なパフォーマンスを見ると、ニヤけたりもする。
そして…余程日頃から嫌いだと感じる相手でもない限り、女の子から告白されたら嬉しいのである。
猛虎とて、そこは普通の男子なのだ。
しかし…告白にOKしたところで、長続きはしない。
同じ体育科の女子も、やはりオリンピック選手やプロを目指すための練習や、最低限の学業をこなすことが最優先。
デートをする時間は殆んど取れないし、大体3ヶ月後には、恋愛感情は薄れて、「お互いに頑張りましょうね」「あぁ…俺もお前を応援してるよ」という形で、交際解消となる。
普通科の女の子など問題外…。
「やっぱり普通に週1くらいはデートできる人がいい」
まぁ…彼氏できたての女の子にとっては当然だよな。構ってくれる相手と青春謳歌してくれ。
もしくは
「私とサッカーとどっちが大事なの!?」
「…サッカー選手としての俺に惚れたとか言っておきながらふざけんな!」
となる。
中学を卒業するくらいには、もう懲りて、硬派を貫くことに決めた小次郎である。
そして…中学三年から、高校に上がるまでの春休みの4月1日のこと…。
とある、普通科の女の子から告白を受けた。
午前中に、反町からエイプリルフールの嘘に騙されて悔しい思いをしていた小次郎は、
「済まない…俺は…若島津が好きなんだ。」
と、その女子に言ってしまったのだ。
もう、俺がホモだとかいう噂でも勝手に流してくれという自棄っぱちも込めて。
すると
「あ…若島津さん…。あぁ…彼なら仕方ないな…。あの…応援します!」
頬を染めて去って行ったのだ。
若島津も、誰からの告白やラブレターも断ってきたのも相まって、「ダメよ、日向さんと若島津さんの間には誰にも入り込めないんだから」
と、女子の間から、生温かい目線が注がれるようになったのである。
若島津は…小次郎が、自分を好きと言ったという情報が流れた時…驚きながらも、小次郎と会う度に、なんだか意識してしまい始めるのを止めようがなくなった。
そして、小次郎も…時折見せる、若島津の色っぽい表情にドキッとしてしまうようになってしまった。
嘘から出たまこと…
しかし、若島津は、小次郎の方から気持ちを告げてくれるのを待つことになり…
小次郎は、咄嗟の嘘のせいで若島津に迷惑をかけて済まないことをしたと思ってしまい…
心を通わせるのに時間がかかってしまったのだった。
「両思いだって気付いてないのって、当人同士だけだよねぇ〜」
と、反町に何度も溜め息をつかせながら
プチ復活しました。
詳細は続きから…