日々雑食

「ハッピーバースデー♪」
「お、反町、誕生日おめでとう！」

7月26日の朝、東邦学園の寮内で、次々とサッカー部員達から声をかけられる。

誕生日の朝一番から、沢山の祝いの言葉がかけられるのは、実に喜ばしいことの筈である。


しかし…当の反町一樹本人は、少し複雑そうな顔で、
「うん…ありがとう…」
と、苦笑いと共に返事を返す。

そう…反町一樹本人よりも、祝いの言葉をかける周囲の方が、ずっと嬉しそうなのだ。

「おう、反町、今年も宜しくな！」
ニヤリと、日向小次郎が、意味深な笑顔を向ける。

「日向さん…ストレート過ぎるよ…」
反町は、溜め息をついた。


学校に着くなり、反町は、いつもの爽やかな笑顔を取り戻すと、ファンの女生徒達からのプレゼントを、嬉しそうに受け取る…。
「ありがとうネ！」
「覚えて貰えてるなんて嬉しいなぁ〜♪」

爽やかな笑顔と共に返されるお礼に、女生徒達も、大はしゃぎをした。

プレゼントを、嬉しそうに受けとるだけでファンサービスになるなど、モテない男子からしたら、嫉妬を掻き立てられて仕方あるまい…。


「はぁ…昨年より多いなぁ…」
可愛らしくラッピングされた、甘い匂いのする包みの山に、反町は溜め息をつく…
「誕生日ですらコレだもん。バレンタインデーはどうなることやら…」

やはり貰ったプレゼントの殆どは、ケーキやクッキーなどのスイーツのようである。


放課後、部室に入ると、待ち構えていた部員達が群がってくる。

「コレは手作りっぽいよな♪」
「おぉ〜！コレって朝から並ばないと手に入らない数量限定のじゃん」
「悪いな反町、遠慮なく食うぜ！」

「はいはい、どうぞ…」


実は、反町一樹は、甘いものが苦手なのだ。
スイーツはもとより、菓子パンの類いも食べない。
果物やヨーグルトも酸っぱい方が好きだ(ヨーグルトに加糖するなんてとんでもない！)
甘辛い味付けの料理も苦手だ。

しかし…ある女生徒から家庭科の調理実習で作ったパウンドケーキを、つい反射的に笑顔で受け取ってしまったものだから…。

今さら、実は甘いものが苦手だとは言えなくなったのだ。

「おぉ、今年も大漁だな！」
入ってくるなり満面の笑みの日向…
日向は、意外にスイーツが好きである。
若島津も、ニッコリとシュークリームを手に取る。

甘いものがイケる部員達にとって、反町一樹の誕生日は、美味しいスイーツにありつける日なのだ。
それも、女の子の手作りだったり、有名店の限定品だったり、なかなかにレベルの高いスイーツが沢山…。


「俺の誕生日って一体…」

まぁ…反射的に、つい女生徒に愛想を振り撒いてしまった我が身のせいなのだが…。

「一足先に走ってくるよ」
反町は、さっさと着替えて、練習時間開始前から走り始めた。

いいんだいいんだ、甘いものが嫌いな方がダイエットに苦労しないで済むんだ。
薄味が好きな方が、ストレスフリーに成人病予防になるんだ。

まぁ…どんな形であれ、みんなに喜んで貰えるというのも悪い気はしないし…。
誕生日に沢山の人に囲まれるっていうのはいいことだよな。

基本的に、サービス精神が旺盛で、育ちも気もいい反町は、結局は本物の笑顔が込み上げるのだった。



その夜…
試合で欠席していた分の授業のノートのコピーを纏め終わり、背伸びをした反町は…
「んん…小腹が空いたな…夜食でも作ろう…」
寮の食堂に向かった。

食堂のおばちゃんが、お櫃にご飯を残しておいてくれている筈だ。
それでお茶漬けでも作ろう…。

「んん…なんかいい匂いが…」
食堂に近づくと、何かのタレのような匂いが漂ってきた。
先客が、何かを作っているのか？

「あ、来た来た。もう少ししても来なかったら呼びに行こうと思ってたんですよ！」
食堂のドアを開けると、サッカー部員達が集まっていて、反町に気付いたタケシがニッコリと手招きをした。

「一昨日、土用丑の日だったろ？南葛の岬が、鰻を送ってきたのが昨日届いたんだよ」
「日向さんが、鰻丼を作ってくれて、ちょうど今できたんだ」

見ると、テーブルには、小振りな丼とお吸い物らしきものが入った椀が並べられている。

「反町のは、コレな」
日向は、上座に反町を招いた。

「あ…」
反町の分だけ、蒲焼きではなく、塩白焼きにした鰻がご飯の上に乗っていた。
甘辛い味付けが苦手な反町の好みに合わせたのだろう…。
「デザートはコレな。酸味の強い種類の葡萄」

席に着いた部員達が、一斉に
「ハッピーバースデー♪」
と、反町に向かって拍手をした。

「有り難う、凄い嬉しいよ！」
心から込み上げてきた、満面の笑みで、反町は頭を下げた。

あぁソリマッチーソリマッチー…

このサイト二周年記念と、反町一樹生誕記念日が…。


ソリマッチーは、贔屓キャラの一人だし、なんか書きたいけれど…


少し…ソリマッチーに対する見方が、最近変わったかも…

あぁ…別に悪い意味ではなくね…