ある冒険者のひとりごと……9 コーディネート


ヒトには 不相応 というモノがある…

だが ちょぴり 背伸び
してみたい

そんなトキがあるものである……




不老不死の村で
“ふしぎな女”に出会った時 ワタシは ある冒険者を思い出していた……


…それは 錬成施設前で
“音のカケラ”を集めて
いた時 たまたま
見掛け 共に 戦った
女性である……


上衣に 鬼のサラシ
下衣は トゥインクルEブーツを履き
頭には フラムウィッチハット をかぶり

ロッドオブアンタレスの杖を振る

長身の彼女は 実に
かっこよく 見えた……



あの女性と同じ格好を
すれば…

…ワタシも……


やっては イケなかった
のかも しれない…

後悔 さきに立たず
とは 言うが
物事 やってみなくては
解らない

この時の ワタシは
後者だった………


帽子と下衣は すでに
持っていた
杖は…
エアリースチールロッドで代用……

あとは……
…鬼サラシ

市場を覗いてみたが
かなりの高値が付いている一番安くて10万Zell(ゼル)…

………ムリだな

こういう所では冷静になる
仕方がない 上衣は
下着で代用しよう……

必要なモノは そろった…

あとは…実行するのみ

…ワタシは 錬成施設前
入り口前にある酒場の裏でこっそり 着替えてみた…

ここは 人がめったに
来ないから……


……

………

…………

水面に映る ワタシの顔は
…なんとも
……微妙な表情をしていた

セクシーさとは 程遠い
変な格好をした
褐色の少女が
まるで宝箱を釣り上げたような顔をして
立っていた……




物事はやってみなくては
解らない

しかし 後悔は先にするのではなく 後で するもの
である……



ある冒険者のひとりごと……8 辻説法

ワタシは 群れることが
出来ない はぐれ鳥
なのかもしれない……




“広がる平原”
そこは 南にアブル連邦
北に国境沿い南
東に3国国境
に挟まれた広い平原である
ここから 大型農園 炭鉱
にも行けるため
人通りも多いい……



ワタシは“冒険者の記録”を求めて この地を訪れた…
掲示板の書き込みによるとこの辺りに隠されているらしい……

錬成施設前 国境沿い南
どちらの掲示板にも
書き込みがあった……

このため ひとり旅でも
迷わず 進めるのだ……


しかし 広がる平原は広い……

探すのは苦労しそうだ



「……」

「…ボンドとは………」


…女性の話し声が
聞こえた…


「…仲間同士で………」




…知り合った 駆け出し
冒険者に説明しているのか
ワタシは そう思った……

シュリンガー公国やアブル連邦の酒場前や酒場内で
よく聞こえていたからだ……
人が通りすぎてゆく
平原 牛車前で とは
珍しいな と足を止めた


「……ひとりでいるより」



だが どうも 変だ……

ボンドの説明をしている
女性は見えるが
説明を聞いてるはずの相手が見つからない……



「…入ってみませんか?」

「きっと 楽しいですよ…」


…ボンド勧誘を始めた

あぁ…このヒトは辻説法を
してるんだ
特定の個人ではなく
不特定多数に対して……

彼女の説法は続く……

ワタシは 立ってるのも
しんどくなって
彼女の斜め前に座り
続きを聞くことにした……


…………

「はぁ…」

「誰も 入ってくれない…」


ため息 と共に 彼女も
座り込んだ……


彼女の後ろ 少し離れた場所で 恋人どうしだろうか
二人で いちゃつき始めた……



「わたしが話しかけても
みんな …逃げていくのよねぇ……」


………

…愚痴り始めた…


「負けるな わたし
きっと わかってくれる
人がいる はず」

「がんばれ わたし」



……自分を 励まし始めた
………

「さぁ 行くわよ!!」


立ち上がると
駆け出して行った……


…………

「ポジティブなひとだったね…」

「………そうだな」

ワタシは うなずいた


「わたしたちも行こうか」


「……あぁ
行こうか…」


……ボンドと いうのも
大変だな

ひとりボンドの
ワタシはそう思った……


“冒険者の記録”を
求めてワタシ達も
立ち上がった

奥に居た カップルらしき
二人も いつの間にか
いなくなって いた……


ワタシ達 冒険者は
1ヵ所には 止まれない
渡り鳥のようなもの……

とは 誰の言葉だったか…

ワタシは この世界の知識
を求めて 今日も旅を続ける……



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