ベルにゃのおはなし…その4 ー後編ー

……………



石造りのブログとステンドグラスブロックを組み合わせた壁の隙間(すきま)に座りこみ
ネコの ベルにゃんは
ゆっくりと午後を 微睡(まどろ)んでいます……


マーロ共和国の強い日差しも レンガブロックの屋根が遮(さえぎ)り

ときおり吹く風が
ネコのベルにゃんの茶色い体毛を優しく撫(な)でて ゆきます……



……………



「……

………」


「………

………………」



“ベルグとさなのへや”の黒い鉄柵(てっさく)に囲まれた敷地…
“水路と石橋”に続くほうの
入り口から 話し声が聞こえて来ます…


ネコのベルにゃんの よく動く小さな耳が 2人の声と足音を捕(とら)らえました……


(…にゃ?

帰ってきたみたいだにゃ…)



ネコのベルにゃんが 緑色の瞳を声のする方へ向けると
褐色の肌を共和国服(赤)に身を包んだ少女と
白い肌に共和国服(青)を纏(まと)った幼女が
コチラに歩いて来るのが見えました……



「……だから ベルグは考えすぎだよ……」



「……ワタシは…また己(おの)が欲望の為に…槍を振(ふ)るっているのではないか?……」



「あれは訓練(イベント)だって 説明を受けたじゃない…」



「……しかし

……………」



「もぅ!!…

ベルグったら……」



……………………



「…さにゃ ベルグ
お帰りにゃ……」



ネコのベルにゃんは
その眼下に2人がさしかかると
ブロック壁の上から声をかけました……



「あっ!

ベルにゃん!!

ただいま!!!」



さな は頭上を見上げます
灰白色をした髪の左に刺したカンザシの
赤い小さな金魚が
2つに分けた髪と共に
揺(ゆ)れます……


壁の上から 音も無(な)く
さな の足下(あしもと)に
ネコのベルにゃん は飛び降ります…

そして その小さな茶色い毛に覆(おお)われた身体を
白く細い さな の脚に何度も往復して擦(こす)り付けました……


「なぁに?

ベルにゃん……

くすぐったいよぉ……」



「…さにゃ

……会いたかったにゃ…」


「ふふっ…

わたしもだよ

ベルにゃん……」


さな はその場に座り込むと ベルにゃんを撫(な)で始めました……

ベルグも その近くに座り
さな とベルにゃんの様子をレッドアンダーリムメガネ越しに暗緑色をした瞳が眺(なが)めています

いつもの への字に結んだ
唇の端(はし)が緩(ゆる)み始めていました……



「…2人とも 水浴びをしたら どうかにゃ?」



さな に撫(な)でられながら ベルにゃんは提案しました…



「……ふむ そうさせて貰(もら)おうか………」



「そうだね…

マーロ共和国(ここ)は
今日(きょう)も 暑いね…」


ベルグとさな は立ち上がると 水浴び場(プール)の方(ほう)へ歩き始めます…
その足下(あしもと)を
早足(はやあし)で 足音(あしおと)を発(た)てず
ネコのベルにゃんが付いてきます


石造りのブロックとカラーブロック(青と白)を組み合わせた 水浴び場(プール)
そこに3人?は
石造りの階段を2ブロック上がって たどり着きました……


ベルグとさな はドレッサーを呼び出し 水着に着替えます…

ネコのベルにゃん は水浴び場(プール)の端(はし)に植えてある リンゴの木(小) の根本(ねもと)で 猫の女神座りをして 2人を見ています……
リンゴの木(小)の傍(そば)に置かれたパーティションと木のタンスが太陽(ひ)を遮(さえぎ)り 心地よい陰(かげ)を作り出しています……


ふたりは
サマートップの赤と青をそれぞれ上衣に
トラジマのオニパンツやメイプル色のパレオ付きサマーパンツを下衣にして 水に浸(つ)かり はしゃいでいます……


プールへは山肌から湧き出す水を 石造りのブロックを組み合わせた水路で引き込んでいました……



「……わっ

さな! ……冷たい」



「…あはは

ベルグ びしょ濡れ…」



「…さなぁ……

えいっ!」



「きやっ…

もう…

ベルグったら……」



お互いに水をかけあっているようです…


ネコのベルにゃん は
アルストラ座り に座り直して瞼(まぶた)を閉じて
2人の様子を聞いています…


……………………


……ひとしきり プールで遊ぶと チェックのカーペットを敷きパーティション2つに囲まれたリンゴの木の傍(そば)に設置さ(つくら)れた休憩所に移動して水に濡れた身体を乾かします…

ネコのベルにゃん は側(そば)に置かれたレンガのブロックに 飛び乗り アルストラ座りをして
くつろぐ2人を見下ろしています……



ここには アフタヌーンティーセットが置かれ
サンドイッチ ショートケーキ マカロン が三段になった お皿に盛り付けてあります…
朝 メイドのスノゥが準備していたものです…
その隣には カットフルーツの盛られた皿も ありました……
南国の果物の放つ良い香りが漂(ただよ)ってきます……


身体が乾くとベルグとさな は水着から黒と白のTシャツとスパッツに それぞれ着替え ティータイムに入りました……



「ベルにゃんは
お菓子や果物は食べないんだね…」



「…ネコは 甘いものは苦手ですにゃ……」



「そっかぁ…」



ネコのベルにゃんの答えに さな は少し残念そうです…



「……カツオのタタキを
合成したらどうだ?」



ベルグが提案します…


アオバカツオ1つとネギ2つで連金合成が出来ます…


「アルスト学園 入学試験の時に フライングフィッシュ や アオバカツオ…
けっこう釣れたね……」



「……飛び魚のからあげ もできそうだな…」


これも フライングフィッシュ1つとレモン2つで連金合成出来ます…


「じゃあ 合成にはいるね…」



さな はレシピ帳を開き
錬金術合成を始めました

あとは出来上がるのを待つばかり…
そのあいだ3人?は お喋(しゃべ)りして過ごします……


「…そういえば 学園は
どうだったにゃ?」



「…きいてよ
ベルにゃん…

わたし達 懇親会会場に行ったんだけど……

だれもいなかったんだよ…
ヒドイと思わない?」



「…にゃ?

どういうことかにゃ…」



懇親会会場…そこはパートナーを伴(ともな)って
入学できた人たちが お喋りをし おたがいのパートナーを紹介し会う場所…でした……



「……ワタシ達は 少し 遅れてしまったらしい…」



「…少しって どのくらいにゃ?」



「……二週間……くらい……かな?」



「……大遅刻にゃ…」



ベルグの答えに ネコのベルにゃんは少し呆(あき)れています……


そのとき

さな が声をあげました…


「あっ!!

合成が完了したみたい…

ベルにゃん… 食べる?」



「…ネギ抜きで お願いしますにゃ…」



「ネギ…嫌いなんだ……」



ネコのベルにゃんの応(こた)えをきいて
さな は カツオのタタキから
刻(きざ)みネギを別の取り皿に移します…



「……ネギは ヒトは平気だが ネコには毒なんだろうな……」



取り皿に移されたネギを
タタキと共にパクつき ベルグが呟(つぶや)きます


「えっ!?

……そうなの?」



さな は ちょっと驚いたようです…



「…植物が葉っぱを食べられない為ですにゃ……

ヒトは毒に耐性がありすぎにゃ……」



白い平皿に盛られた カツオのタタキを食べつつ
ネコのベルにゃん が説明します…



「カラアゲもタタキも
まだまだ あるから
おかわりしてね…」



合成空間から 合成完了したフライングカラアゲを
取りだしながら
さな が2人?に声をかけます…



………

……………

…………………


ベルグとさな は 新しく加わったネコのベルにゃん と談笑(だんしょう)して
静かで満ち足りた午後を過ごします……



…………………



やがて 太陽(ひ)も傾き
周辺(まわ)りが暗くなって来ました
敷地内に設置してある
夜光鉱石を照明に使った
プール脇に設置された街路灯や建物入り口に提(さ)げられたカンテラ(携行用ランプ)
キッチンの天井からの吊り下げランプ…などがボンヤリと明かりを灯(とも)し始めました…


昼間の明るさ を溜(た)め込んだ夜光鉱石は
暗くなると その明かるさを夜光鉱石(いし)の周囲(まわり)に放ち…
夜が明けると再度(ふたた)び 周囲(まわり)の明るさを夜光鉱石(いし)の中に
取り込むのです……



「……暗くなってきたな…
そろそろ寝室へ移動……するか…」


周囲(まわり)を見渡(みわた)した
ベルグが呟(つぶや)きます…



「そうだね…

あしもとが見えるうちに
ベッドルームへ 行こう?」


食器をかたずけながら
さな は応(こた)えます…



「…にゃ

行くとしますかにゃ……」


昼間は縦長に細い瞳孔(どうこう)を 今は真ん丸(まんまる)にして
ネコのベルにゃん も立ち上がります……



建物内は 屋根が無いとはいえ だいぶ暗く
その中を ネコのベルにゃんを先頭に さな ベルグの順に寝室を目指します…



寝室は二列になった木の階段を6ブロック登った先にありました…



石のブロックと木のブロックを組み合わせた床の中央に
ベルグとさな の為(ため)のダブルベッドが置いてあります…
その周囲(まわり)に タンスやパーティション(木製の目隠し) 木の本棚を置いて壁代わりです…
ベッドの数ブロック上には 日除けにパラソルを設置(お)いて
あります…



ネコのベルにゃん に先導(せんどう)され
薄暗闇のなか 危(あぶ)なげなく寝室(ベッドルーム)にたどり着くことが出来ました……



部屋を管理するメイドのスノゥによって 洗濯されたシーツに取り替えられ 完ぺきにベッドメイクされた そこは 2人にとって 気持ちの良いところです…


本棚の並んだ壁側(かべがわ)にベルグ…
パーティション(木製目隠し)のある側(がわ)にさな…
その二人のあいだに
ネコのベルにゃんが丸くなって座り 朝まで眠りに就(つ)くのです………



本棚には ベルグの集めた
様々な書(しょ)が並んでいます…



まものちゃんのぼうけん

俵王国の伝説

青き森の物語

変人日記

空とぶ牛車

気まま日記

武器と防具

見習い執事とお嬢様

ルナかわ記

とあるボンマスの記録(おぼえがき)

魔物図鑑

セントセレナ号航海日誌

来訪者と漂着者について

二振りの剣は舞踏士を踊り(たたかい)に誘(いざな)う

スキルとその効果

竜狩りの黒鉄(くろがね)

詩集・歪んだ王国

月光の下(もと)少女は騎士になる

東海島伝聞録


…………等々(などなど)
旅先で収集してきた本です
旅を続けるかぎり
まだまだ増え続けることでしょう………



眠りに着(つ)くまでのひととき その中から1冊選んで読むのがベルグの日課でもありました…

もっとも1冊 読み終えることなく途中で眠りに落ちてしまうのですが……


ベッドの足元に置かれた
3つの木のブロックの1つに座り
カンテラの明かりの下(もと)
ベルグは ゆっくりとページを捲(めく)ります…


さな はネコのベルにゃんと共に先にベッドに就(つ)いて
かわいい寝息を発(た)てています………


……………………


眠気を覚えた ベルグは読みかけの本を棚に戻し
パートナー さな の隣(となり)に もぐり込み 穏やかな眠りに落ちてゆきます…

ベルグの布団に入る気配に ネコのベルにゃんは瞼(まぶた)に隠された緑色の瞳を開き 顔を上げます…

周囲(まわり)を見回し耳を動かすと 再(ふたた)び瞼(まぶた)を閉じました…


やがて 朝日が寝室に差す頃に起き出して いつもと変わらない
日課の毛繕(けづくろ)いを始めるのです…

ベルグと さな はネコのベルにゃんと毎日は一緒に いられませんが 3人?の時間を大切にしているようです………


こうして ネコのベルにゃんの 一日は過ぎ そして始まるのです……



……………ベルにゃのおはなし その4 ーベルにゃんの一日(いちにち) 後編ー おわり………

ベルにゃのおはなし…その4 ー前編ー

…………



“ベルグとさなの部屋”


ネコのベルグ“ベルにゃん”は ひとまず ここで暮らしてみる事にしました…




ネコの ベルにゃんは
ベルグ達のダブルベッドの下で寝ているみたいです……


朝陽がベッドの隙間に差してくると ネコのベルにゃんは起き出してきます…

あくびをひとつすると
身体全体で大きく伸びをして
毛繕(けづくろ)いを始めます……

舌と前足を使って たっぷり時間をかけ 茶色い全身の毛を くまなくブラッシングをしていきます……


それが終わると ベルグとさなの部屋 の敷地内を
ゆっくりと歩きます……



(…あそこの家具は入れ替えたほうが いいにゃ

……ここの草むらは邪魔にゃ

やはり 撤去すべきかにゃ……


にゃ?

…このヤシの木は この庭には合わない気がするにゃ……

ベルグにも 一言(ひとこと)いうべきかにゃ……)



歩き回りながら ハウジングの事を 考えているみたいです…




ひととおり 敷地内を歩くと
台所(キッチン)の区画内
真ん中にある食器等置き場(テーブル)に 軽々と飛び乗り…
アルストラ座り をしました
そして瞼(まぶた)を閉じます…

しかし耳だけは動いています…

ネコのベルにゃんは 浅い眠りに入ったみたいです……


………………




しばらくすると草地を踏む若い女性の足音が聞こえてきます…


扉も壁もないキッチンの入り口で 足音は止まります…



“…コッ…コッ……”



石造りのブロックを組んだ柱をたたく(ノック)する
小さな音が辺(あた)りに響きます……



「…ベルにゃん様……

メイドのスノゥです……

よろしいでしょうか?…」


その声の方向に ネコの ベルにゃん 首を廻(めぐ)らし 瞼(まぶた)を開きました…


シュリンガー公国メイド隊のくすんだピンク色のメイド服を その身に纏(まと)った女性が
いつもの笑顔でバスケットを右手に佇(たたず)んでいる姿が その緑色の小さな瞳に写ります……



「…スノゥ?

……にゃ

入室(はいって) いいですにゃ……」



ネコの ベルにゃんは
メイドのスノゥに答えました…



「では…

ベルにゃん様 入室(おじゃま)します……」



メイドのスノゥは 扉もない入り口に一礼(お辞儀)すると ゆっくりと軽やかに
ネコの ベルにゃんの座る テーブルに近づきます……



「お食事を お持ちしました…


どうぞ お召し上がりくださいませ……」


ベルにゃんの座る
テーブルに白い平皿を
静かに置きます…
そして右手に提(さ)げたバスケットから クロックムッシュを 取りだし
その器に盛り付けました……

その隣(となり)に 水の入った皿も 並べます……



それが終わると メイドのスノゥは ネコの ベルにゃんから 一歩下がって静かに佇(たたず)みます……


一連の動作は よどむことなく自然で 清き流水の如(ごと)しです……


……………



「…スノゥ

そこに立たれると 落ち着かないにゃ……

せめて 座って
くれないかにゃ……?」



クロックムッシュの載った皿を目の前に ネコの ベルにゃんは メイドのスノゥに頼みごとをします…


……………



「ベルにゃん様…

メイドとして いかなる事態にも対処しなくては なりません…

わたしのことは 気になさらず
お食事を はじめてくださいませ……」



細い眉を少し困ったように ひそめ メイドのスノゥは
言葉を返します…



よく動く小さな耳で それを聞き ベルにゃんは
考え込みます……



「…にゃ?

…………………

それならば…
ワタシと一緒に食事をしないかにゃ?」


ネコの ベルにゃんは その小さな顔を メイドのスノゥの方に向け提案をします…



「…!!

まぁ!

にゃんこさんは
ご主人様と同じことを おしゃるのですね!」



両手を胸の前でパチン! と合わせて
スノゥは 感心しています…



「…どうかにゃ?」



「…食事は先に済ませてきているのですが……

…………」


「…ダメかにゃ?」


軽く握った右手を顎(あご)にあて メイドのスノゥは
いつもの考える仕草(ポーズ)を取ります……



………



「…では

ベルにゃん様…

お付き合いさせて いただきます……」


「キッチン(ここ)は 少し狭いので…

緑石絨毯(みどりとじゅうたん)の間に移動しましょう…」



緑色のカラーブロックを隙間(すきま)だらけの壁の角(かど)に敷き詰め
そのカラーブロックの上にチェックの絨毯(カーペット)を置いた区画が
キッチンの隣にあります…
2人はそこに移動しました…


絨毯(カーペット)の上に お盆で運んだ食器を並べ
ふたり向かい合わせに座り……



「「いただきます…にゃ…」」


2人は食事を始めました……


パンにハムとチーズを挟(はさ)んで両面を焼いた クロックムッシュ…
それを ネコのベルにゃんが食べやすいよう小さく切り分けられ
白い平皿に盛り付けられています……

ささやかなスノゥの心遣いに ベルにゃんは 嬉しくなりました……


その スノゥはティーポットで紅茶を煎(い)れ
3段になったケーキスタンド“アフタヌーンティーセット”からスィーツを摘まんで 午前のお茶を楽しんでいます……


(……ふふっ 食事している にゃんこさん かわいい……)


受け皿(ソーサー)にカップを戻すと ニコニコと ネコのベルにゃんの食事を眺めています……



「……!!」


「……あら?

倉庫に 家具が送らてきました…

……………

これは……

……桜の…木?……

……ご主人様から?」


メイドのスノゥは驚きました…

はじめてみる家具だったのです……



「…にゃ!

…無事 アルスト学園に 入学できた みたいだにゃ……」


食事を終えた ネコの ベルにゃんが 答えました…



「…マーロ共和国とクリシュナ魔王国が共同設立した
あの……学園に…?」


メイドのスノゥが思わず
聞き返します……

「…そうにゃ

まだテスト開校で3週間のお試し体験入学にゃ…」


口の周りの汚れを舌と前足で
きれいになめとりつつ

ネコの ベルにゃん話し続けます…



「この家具(桜の木)は
いま ご主人様達が集めているのですね…」



「…ちかいうちに家具の入れ替えがあるかもしれないにゃ……」



「それは楽しみですね

………………

……にゃんこさん

そろそろ わたしは お仕事に戻ります…」



「…そうかにゃ

今日は ありがとにゃ…」



「こちらに お水とお茶

置いときますね…」


浅く白い深皿に それぞれ 水と紅茶を満たし
メイドのスノゥは立ち上がります…

ネコの ベルにゃんは白いストッキングに包まれた
スノゥの足元に近づき その小さな身体を擦(こす)り付けます……


「……ふふっ

にゃんこさん…

くすぐったい……」



「…スノゥ お仕事
気をつけてにゃ…」


そう言うと ネコの ベルにゃんは隙間(すきま)だらけの 石造りのブログとステンドグラスブロックで出来た壁をやすやすと登り
ちょうど日陰になるブロックの隙間に入り込み 香箱座りをしました…



「では ベルにゃん様

洗い物を済ませてから

行きますね……」


ベルにゃんを 見上げ スノゥは 一礼すると
食器を洗うため
キッチンに向かいました…

キッチンの中
竈(かまど)の左側に
湧き水を利用した水汲み場あります

………………

ティーポットやカップ
皿を洗う音が
ブロックの上で瞼(まぶた)を閉じて座る ベルにゃんの耳に入ってきます…


やがて その音も聞こえなくなりました……


メイドのスノゥは
他の部屋の点検と手入れに 向かったのでしょう……



……………



ネコの ベルにゃんは 緑色の瞳を閉じたまま 時折(ときおり) その茶色い毛並みに包まれた小さな身体を吹き抜けてゆく 涼し気(すずしげ)な風の音を聞いていました……………




……………ベルにゃのおはなし その4 ーベルにゃんの1日(いちにち) 前編 ー
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