ある冒険者のひとりごと……13 連邦酒場にて 後編

前回のひとりごとより……

料理が運ばれてきたので
ワタシ達は 食事を始めた……





…ちぎったパンをスープに軽く付け お互い黙々と口に運ぶ

ワタシ達の間には大皿……
そこには山盛りの千切りキャベツと粉を付けてカラッと油で揚げた鳥肉が2人ぶん鎮座(ちんざ)している……
食べきれるかな?
初めて頼んでみたのだが
…………




「ねぇ…」
「なぁ…」


「「………… 」」


「きみから どうぞ……」

「…いや 君から……」


「「……………… 」」


同時に言葉を発し
お互いに遠慮(えんりょ)してしまう……

お互いの 息が合いすぎるのも困りものだ……



「…このキャベツ 凄い量だな……」


「……うん…」



パートナーがおとなしい…さっきの事を気にしているのか………


皿のカラッと油で揚げた鳥肉を1つ 千切りキャベツもキャベツバサミで一掴(ひとつか)み 自分の小皿に移す


「……さっきの事だが


エリアボス“グランマ”に挑戦してみようと思う……」



「……!!」


パートナーは驚いて顔を上げる……


「……その……きみは ……だいじょうぶなの?」



ワタシは グランマ に初めて挑戦して以来 ずっと避(さ)けてきたのだパートナーが驚くのも
無理はない………



「……正直 ワタシ達単独で挑戦するのは 無謀かもしれない……

酒場に助っ人依頼は出す…
誰も来ないかもしれない…
今回1回だけワタシに付き合ってくれないか?

……もし ワタシが先に倒れたら直ぐに撤退してくれ」


ワタシは椅子に座ったままパートナーに頭を下げる


パートナーは考え込んでいるのか無口だ……


ややあって

「……あたまを上げてよ
この量の料理わたしひとりじゃ食べきれない
でも ふたりなら完食できる……

たとえ時間がかかっても

………ねっ!」

パートナーも自分の取り皿にキャベツとカラッと揚がった鳥肉を移し奮闘していた…
だが大皿に残る料理は手強い……


「そうだな……ワタシもやってみせるさ」


再び食事を続行する
ひとりでは難しくても
ふたりなら達成できる可能性がある……

2人旅のなんと心強いことか……

“またパートナーに助けられたな……”

ひとり愚痴(ぐち)ると
箸休めに小皿のカブの浅漬けに手を伸ばし 口内でほどよい歯ごたえを楽しむ…



女の子二人で食べるには
量が多すぎた……
ワタシ達は まだ少女の範疇(はんちゅう)に入る身体(からだ)をしている
男性冒険者用の料理を注文したことを 少し後悔したが 何とか完食する事が出来た……


これから挑戦するエリアボス“コノミグランマ”との戦いも時間は かかるかもしれない……

しかし 最後まで戦い抜けるかもという根拠(こんきょ)なき自信は今回の食事の件でついたと思う……

ワタシながらおかしな事だ
……フフッ
思わず笑みがもれてしまう


「な〜に? おもしろいことでもあった?……」



パートナーがワタシの顔を見上げこんでくる……



「……いや 何でもない」



「そっか〜 じゃ合成の終わった“ゲルミンフード”
出品に 行こうか」



「……そうだな いくらで出品すれば いい?」


ワタシは相場が分からないのでパートナーにたずねた……



「…う〜ん? とりあえず
一万Zellで出してみよ
売れなかったら その時考えようよ?」



「……わかった 君の考えでいこう」



ワタシ達は市場に出品に向かった……………




ある冒険者のひとりごと……13 連邦酒場にて 前編

前回のひとりごとより……

ワタシ達は“ゲルミンフード”の合成が終わるまで
連邦酒場で食事をすることにした……





連邦酒場は若い女主人が一人で切り盛りしている


ワタシ達は女主人に注文を伝えると奥のテーブルに陣取った……


入り口は人通りが多い…
転職の受け付けも在るため時間帯によっては人でごった返す……


ワタシは人と話すのが というより他人(ひと)が苦手だ……

過去に何かあったのかも知れないが きっと思い出したくないのかもしれない……

パートナーとは気軽に話せてる………と思う……




パートナーに“滅びの村”“地下工場”で初めて会ったとき
ワタシは ひどく混乱し恐怖に魂(こころ)が飲み込まれそうになっていた……
自分が認識できず 自身が闇の中消滅してしまう……そんな感覚の中
彼女は恐れるでもなくワタシを抱きしめ
「だいじょうぶ わたしがここにいるよ
こわくない こわくない……」

幼児(おさなご)をあやす様にワタシの頭を撫で背中をさすり
常闇に消えようとするワタシ(魂)を現世(この世界)に繋(つな)ぎ止めてくれたのだ……



その階にいた魔物は発狂化(バーサーク)したワタシが倒した後とはいえ
いつ復活するかわからない状況でのことだった……



事の顛末(てんまつ)をワタシ達をライバルと呼ぶ少女から しばらくたってから聞かされたワタシはパートナーが魂(いのち)の恩人であることを知る………




食事が運ばれてくるまでのひととき ワタシは ぼんやりとあの時のことを考えていた……
その件について
パートナーにたずねると顔を赤らめ あまり触れられたくない様に別の話題に切り返された………

「もぅ…… そんなことより3国国境入り口ではキャベツが採取できるよね なんでだろ?」


「……ワタシが考えるに
近くの大型農園からの種が根付いて自生してるんじゃないかな…」


「そっか〜 じゃあ菜種も?」


「おそらく…運んでいる途中にこぼれ落ちた菜の花の種が根付いて黄色い花を付け また種になりそれをワタシ達が採取する……」


「その時 こぼれ落ちた種がまた根付いて種をつけるんだね」


パートナーは嬉しそうに話す……

こんな他愛もない会話なのにワタシは幸福感につつまれる……
いや 話さなくとも2人一緒にいるだけで満足なのだ…

ワタシはそうだがパートナーはどう思っているのだろう?
ワタシは たまに不安になる…


「……なぁ」

「ん? なに?」

パートナーは笑顔を絶やさない


「……ワタシと居て つまらなくないか?」


「ん? なんで?」


「…ワタシは つまらない女だ 顔も可愛くないし美人でもない………
冒険者としても強くないし
…掲示板に表示される順位も 8000番台がやっとだ…
……ワタシと組んで後悔してないか?」

不安に耐えきれなくなり
口に出てしまった……


両手でテーブルをつかみ
椅子を蹴飛ばす いきおいでパートナーは立ち上がった

「んもぅ!! じぶんを したに評価しすぎだよ!
気づいてないと思うけど きみの笑顔はとってもステキなんだよ……

それに きみは弱くなんかない! わたし達が生きのびれるよう無理なたたかいは避けている……
でも今のわたし達ならエリアボスにだって負けないよ!!」

「……ワタシが素敵?」

思ってもみなかった答えが返ってきてワタシは面食らった……


「わっ! わっ! 今のなし!! (///∇///)

そんなことよりも
わたしは きみを選んだことを 後悔なんかしてないからね!!」


顔を真っ赤にして否定して肯定するパートナーは
愛らしかった……




「お待たせしました〜」

ちょうど頼んでいた料理が運ばれてくる……


パートナーはあわてて座り直すと赤らめた顔を下に向ける……
つい大声を上げてしまったことが恥ずかしかったのだ


「ごゆっくりぃ〜…」

ワタシ達の目前に料理を並べ終えると女主人は お盆を持って調理場へ下がって行った……



「……じゃあ 食べようか?」


「……あぁ」


ちょっと気まずい空気になったがワタシ達は食事を始めた………

ある冒険者のひとりごと……12 連邦市場にて 終章

前回のひとりごとより……


素材が集まると パートナーが合成を始める……


合成枠は2つから4つに増やしてあるから 共和国服上下2着ほぼ同時に作ることができた……




しばらくすると

「合成が終わったよ」


パートナーが合成空間から服を引っ張りだしカバンにし舞い込む………


「じゃ 市場に 行こうか…」

「……うむ」

ワタシは頷く……



ワタシは連邦服(緑)上下
パートナーは連邦服(青)上下 に着替えアブル連邦城塞都市 市場に向かう……
服のリボンをワタシは緑
パートナーは青に染め直しているのが ちょっとした自慢だ……




城塞都市入り口の掲示板を覗くとワタシの書き込みはまだ残っている……


市場に共和国服を出品し
貸し倉庫に採取した素材を仕舞っていると……


「あれっ?“ゲルミンヘッド”が みっつもあるよ」


パートナーが声をあげる



…魔物討伐依頼を受けた時たまに出没するゲルミンパパが落とした被り物だ……使わないまま放置していた

「うん …いつの間にか3つも手に入れていたのだな……」


ワタシは魔物討伐依頼を持ちかけてくる冒険者達のことを思った………



「う〜ん? …そうだ出品しよう!!」



「…? これは買い手が付かなかったはず……」

以前 出品したが売れ残り
そのまま倉庫に仕舞いぱなしだったのだが……



「ふ ふ〜ん …わたしは何ができるでしょうか?」

パートナーは腰に手をあて目を閉じ得意げに問いかけてくる……



「…!!
…そうか 錬金術!」


ワタシはハタと気付く



「では この価値のないゲルミンヘッドを価値あるものに
変えてみせよう……」

パートナーは芝居がかった物言いをすると
レシピ帳を開き 合成の準備に入る……

「ゲルミンヘッドを1つ…
綿花を99……

“ゲルミンフード”合成!
はいりま〜す!!」


パートナーが高らかに宣言すると

素材は合成空間に吸い込まれた………



「あとは 時がみちるのを待つだけ……」


「じゃ 食事に行こうか…」


「そうだな……」



合成には時間がかかる……直ぐに出来るものから12時間あるいは3日……実に様々だ……


ワタシ達は“ゲルミンフード”が合成されるまで
連邦酒場で食事を済ませることにした………




ある冒険者のひとりごと……12 連邦市場にて 其の四

前回のひとりごとより……

共和国服の素材“鳥獣の羽毛”を求めて“実り多き半島”へ ワタシ達は向かう………



“実り多き半島”ここは緑に覆われた丘陵 湧き水が水車を回し 穏やかな風が吹き抜ける地……

ここでは“石英”“粘土”“ミョウバン”“松脂”“ハーブ”“骨”“サンゴのかけら”“銅鉱石”
等(など)が採集できる……

魔物は“コノミ”“アラビーヌ”“トレント”が生息している……

“鳥獣の羽毛”は歩き回る木の魔物“トレント”が落とす……属性は水
土属性が有効だ……



しかし ワタシは 聖騎士のスキルと無属性の片手剣“リズビット”で戦う……
片手剣がコレしか無いのだ勿論(もちろん)剣のレベルは最大にまで強化してある……

スキル“シールドストライク”で相手の物理防御を下げつつダメージ “セイクリッドサークル”で全体の体力を削り“プロテクション”でワタシ達の防御を強化
“フォアフロント”でワタシに敵の注意を引き付けつつ片手剣印
付与 “クロスブレード”か“カレッジブレード”で片手剣印を消費して確実に1体を仕留める……
毎回上手くはいかないが
コレがワタシの聖騎士としての戦い方だ

パートナーは 全体回復の“アルカナ”火属性魔法攻撃“インシネレイション”風属性魔法攻撃“セラフィムウィング”土属性全体魔法攻撃“グランドクロス”全体魔法物理攻撃上昇“ハイオーラ”水属性魔法攻撃“精霊の息吹”これは相手の魔法物理攻撃力を下げる効果がある

パーティーを組まず単独戦闘するワタシ達のスキル構成は試行錯誤のうえ このかたちに落ち着いた……



“アラビーヌ”は“シノビーヌ”によく似た2本足で立つ犬の魔物だ…
“シノビーヌ”が風属性で火属性に弱いのに対して
“アラビーヌ”は土属性
風属性に弱い……“極楽鳥の羽”と“魔物の肉”を
落とす……
“コノミ”は火属性 水属性に弱い……



ここでの素材集めを終えると “茜の実”
これは 採取でしか取れない……
“3国国境”か“国境沿い”南側で実が熟すのを待つしかない……
だから毎日通って採取することになる……


ある冒険者のひとりごと……12 連邦市場にて 其の参

前回のひとりごとより……


パートナーにまんまと のせられたワタシは共和国服の素材を入手するため“山と海とビーチ”に向かった……




“山と海とビーチ”ここは高い山の麓(ふもと)に広がる海岸と美しい海が見所
“ミョウバン”“紫根”“君子蘭”“黄連”等(など)が採集できる……
生息する魔物は“アルストラ”“ギョルミ““フェアリダケ”いずれも強敵だ…

共和国服の素材は“動物の皮”“茜の実”“鳥獣の羽毛”の3つが必要になる

“アルストラ”からは“動物の皮”と“魔物の肉”が採れる “魔物の肉”は“普通の釣りえさ”の素材となるので 先ずはアルストラを狩ることにしたのだ……



今のワタシの職業は聖騎士 ……騎士が王に仕えるなら 聖騎士は神に仕える職業と説明を受けた…… 神に仕える気は無いが 全一次職をマスターしたワタシは最初に実装された二次職 聖騎士に就いた……


聖騎士に成りたいと言っていた紺碧髪の彼女は元気だろうか……
あれ以来 会えていないが……




アルストラは“風”属性
弱点である“火”属性で攻めるのが基本だが……
ワタシの手持ち武器では
あまりダメージを与えられない……聖騎士専用スキルに変え武器も無属性に変えやっと倒せた……


水属性のギョルミ2体とアルストラ1体の戦闘になると苦戦するのだ……
少しの油断が戦闘中体力の2/3持っていかれることもある
…………





“魔物の肉”10個手に入るとパートナーに“普通の釣りえさ”10個に合成してもらう……


戦闘に飽きたら釣りをするのだ……
釣り場は2ヶ所あり それぞれ 飛び魚 ヒラメ がよく釣れた……
サメが釣れることもあった………
ここでは マグロ が釣れるらしいが まだ お目にかかってはいない…………



パートナーと水を掛け合ったり 海中に飛び込んだり……
なかなか遊べる場所だ




次は“鳥獣の羽毛”を手にいれるため“実り多き半島”へ向かう事になる…………


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