前回の物語より……

ボンドマスターでもある彼は魔物討伐を終えた後 新メンバー勧誘の為 シュリンガー公国を訪れていた………





「……朝のお茶も、いただきましたし
ボンドメンバーに挨拶して出かけますか……。」


「そうね、このボンドに、ふさわしい冒険者(ひと)が見つかると、いいけど……。」


ティーセットを片付けながら 彼のパートナーが答える……


彼は これから新メンバー勧誘に出かけることをメンバーに伝えようとボンドチャトに接続を試(こころ)みたのだ………



……?


「おかしいですね。
ボンドチャトに繋がりません……。」


「何かトラブルかしら?
……ボンド掲示板には?」



「やはり、繋がりません…。
………どうしたのでしょうか?」


彼のボンドコマンドが全て使えなくなっていた……
つまりボンドメンバーとの連絡の手段が全く無くなっていたのだ……



「困りました。……どうしたらよいのでしょうか……。」


「ここに居ても、仕方ないわ……とにかく出ましょう?」



パートナーの言う通り部屋を出なければならない… 一晩しか予約を入れていなかったのだ……

部屋を出て一階に降りるとこの酒場兼宿の主人が声を掛けてきた……


「よぉ〜 …どうした朝から暗い顔をして……」



「あっ、おはようございます。……実はボンドチャトに接続出来なくて……。」



「そいつは 大変だな……
今日はボンマスの証(あかし)着けてないんだな……どうした?」



……!!


「そういえば、昨夜服から外して……。」



「…その時ボンドメニューを開いてなかったか?」



「……そういえば、開いていたかもしれません……。」



「あちゃ〜 それだよ
寝ぼけて退会を選んじまったんだよ……
退会しちまったら ボンド機能は使えない……
ボンドに入り直すことも出来ない…
ボンドに入る為には マスターに承認してもらはなきゃならない…
退会した時点で あんたのマスター権限は消失……
だから マスターの証も消えちまったわけだ……」



「おっしゃる通りです…
なんとも、自分が不甲斐(ふがい)ないです……」


彼は 下を向き自分を恥じているようだ………



「で?これから どうするんだ…
あんたのボンドにも サブリーダーが いるんだろ?」


「えぇ、います。……彼女を探してボンドに復帰します。」



「この世界は広い その中から1人の冒険者を見付けるのは難しい……
だが可能性はゼロじゃない……
ボンドってのは絆(きずな)だ………
絆ってのは お互いを信じる心だ
あんたの作ったボンド
あんたの選んだメンバーを信じてみるこった……」



「はい!そうします。」


雲っていた彼の顔は 晴れやかになる……



「早く見付かる様 おれも偶然の神に祈ってるぜ!」



「ありがとうございます。」


あては無いが パートナー共々公国酒場を後(あと)に大通りへ歩を進めた………