前回のひとりごとより……

ワタシ達は ボンドマスター達と四人で茶会を始めた……




「甘味(かんみ)がレモンタルトしかないというのは少し寂しいな……」


ワタシが愚痴(ぐち)ると


「レシピに、載っているのしか合成出来(つくれ)ないなんて…
どこかにスィーツのレシピないのかしら?」


ボンドマスターのパートナーが会話に乗ってきた……


「料理のレシピは多いのにね」


ワタシのパートナーも会話に続く……



「あ、ちょっと席を外していいかな?」


「あっ、行ってらしゃい。」


ボンドマスターのパートナーは彼の用事が何か解ったらしくワタシのパートナーと会話を続けながら その手をヒラヒラと振る…



「それから、火を貸してくれませんか?
あいにく、切らしてしまいまして…。」


なるほど食後の一服がしたいのか……
ワタシも察(さっ)した



「…あぁ いいとも
ワタシも 一服しよう…」


「えっ?…あなたが?」



意外に思われたらしく
顔右側に着けた仮面が
ズレている……

ワタシは 返事代わりに懐から朱羅宇煙管(キセル)を取り出すと右手の上で 回して見せた そしてキセルを耳に掛けると まだ燃えているアルコールコンロから火縄に火を移しボンドマスターの後に続く……


「…ちょっと行ってくる」


パートナーに一声かける


「うん 行ってらっしゃい」

「…でねぇ、彼ったら、ひどいのよ〜……」


「あぁ〜 わかる……」



パートナー同士 会話が盛り上がっている……



ワタシはボンドマスターと共に平行世界へ移動する
二人だけの空間 誰もいない 見られることも無い…だから ここなら煙を出せる“煙を出してはならない”この教えに何ら反しない 何しろ誰も見ていないのだから……


「あなたが吸われるとは、意外でした。」


「…そうか? 酒も呑めるが?」


「いえ、私は呑めないので…。」


「…そうか 残念だな」

そう呟(つぶやく)とボンドマスターに火縄を一本渡す

それからワタシは煙管(キセル)の火皿に 刻み煙草(たばこ)を詰め火縄から火を移す…
軽く吹かして煙草に火が着くと逆に吸い込み香りと軽い酩酊感(めいていかん)を楽しむ……


そして一気に煙を吐く……

「ふぅ〜………
やはり旨(うま)いな
食後の一服は………」


ボンドマスターの方は
小箱から紙巻きタバコを一本取り出し 火縄から火を貰(もら)い 煙草を吹かしていた…
小箱には“マ・ルボロ”の文字が見てとれた……



「やはり、落ち着きますね 一服するのは。」


「…あぁ そうだな……
で 話しと言うのはなんだ?」


「気づいてましたか…。」


「煙草の火をネタにワタシだけを呼び出したのだろう?
煙草呑みが火を切らす訳がない……」


「えぇ、そうです。パートナーには聞かれたくない話を…
もっとも、貴女(あなた)が喫煙者とは……、意外でした。」


「…悪い少女(おんな)でね ……」


「…いえ、ちょっと驚いただけです」


「…神職に着く者だから? …あいにく信心深く無い方でね……」


「そんな方も、いらしゃるのですね…。」



「話というか、悩みと言った方が、いいのかもしれません……。
幸(さいわ)い、貴女は司祭様…胸の内(うち)を聞いてもらえますか?」


彼は2本目の煙草に火を着ける……


「よろしければ、吸います?」


タバコが一本覗(のぞ)いた小箱が差し出される……
ちょうどワタシも吸い終えたところだった……

………


「…頂(いただ)こう……
司祭とはいえ 見習いの身
神の加護はあまり期待しないでくれ……」


彼のタバコの火口にワタシのタバコの先を押し付け
数度小刻みに吸うとワタシの方に火が移った…

お互い一服したのち…



「貴女は悪いおんなと言いましたが、良い司祭様に成れますよ。」


「ありがとう お世辞でも嬉しいよ……」



ワタシは彼の悩み事を聞きそれに答える事にした………