相変わらずの名前変換なし。ふわっとした夢です。というか夢じゃない。
『6時に××神社に集合ね』
女子からのメールを確認して、液晶画面をぱたんと閉じる。
今日は今年最後の夏祭り。この前の球技大会の打ち上げも兼ねて、クラスのみんなと花火を見に行くことになっていた。待ち合わせは近所の神社前。
制服でもユニフォームでもなく、私服で学校の奴らに会うのは随分久しぶりな気がする。
箪笥の奥から服を引っ張り出して、適当に合わせた。んー…こんなもんでいっか。いつもと変わり映えしねぇけど。
鏡に向かってちょいちょいっと前髪を直して、財布と携帯をポケットにつっ込む。待ち合わせ10分前。
姉貴に声をかけて家を出ようとした時、ブブブ…と携帯が振動した。電話だ。
「よぉー、赤也」
「おう。なんだよ」
「まだ家か?」
「今出るとこ」
携帯を耳に当てると、クラスメイトのやかましい話し声が耳に飛び込む。もう集まって来てるのか。
『いいこと教えてやろっか』なんて、電話越しでもコイツのにやにやした顔が思い浮かんだ。すぐになんのことだか分かる。
「今日は来ねぇって」
「あ、バレたか」
「予定があるんだってよ」
同じクラスの斎藤ユキ。別に飛び抜けて可愛いって訳じゃないんだけど、なんとなく気になる女。
身長は俺よりちょっと小さいくらいで、目立つ訳でもなく、かといって静かすぎる訳でもない。つまり普通。平凡な奴。
だけど俺は、なぜかコイツを気づけば目で追っている。大して話したこともねぇのに。
球技大会では卓球に出てたらしくて、卓球なんてだせーってサッカーにしたのを少し後悔した。ま、俺大活躍だったけど。ハットトリックだっけ?サッカー部門MVPに選ばれたし。斎藤、知ってっかな。
「あー…らしいな。残念だったな?」
「わざわざそれ言いに電話したのかよ。もう切るぜ」
「わ、悪かったって、そう怒んなよ」
改めて聞かされるまでもなく、斎藤が今日の夏祭りに来ないことは知っていた。放課後友達にそう話していたのも聞いていたし、予定があるなら仕方ないのも分かってる。
だけど斎藤の私服が見られるのかなぁなんて、一瞬でも期待した自分がいるのも確かだ。どんなのかなって想像して、一人で盛り上がって、くだらねぇ。
「そのことなんだけど、斎藤来るぜ」
「…え」
「あんまり赤也くんが可哀想だから、俺が手回ししてやった訳」
どくん。心臓が大きく脈打つのを感じる。
どうやってとか、なんでとか、言いたいことはたくさんあるけど後でいい。
うるさくしゃべってる携帯を置き去りにして、俺はリビングに駆け込んだ。
「姉貴っ!!!俺の恰好変じゃねぇ!?」
「…はァ?」
結局待ち合わせには大遅刻、みんなにはこっぴどく怒られることになった。
でもだからなんだ。俺を見て斎藤が笑ってくれたから、それでいい。
就職に対する意欲がなさすぎ…る……\(^O^)/