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先を書かない気がする小話


お久しぶりです。

大学のレポートとドキサバに追われる毎日ですが、ちょこっと書いてみました。しかしここで飽きそうだ…

時系列がむちゃくちゃなので、黒曜ズだけが子どもだったりします。一応黒曜夢…?です。











「それじゃ、よろしくお願いします」


ぺこっと頭を下げるのが可愛くて、何だか笑ってしまう。沢田君は恥ずかしそうに顔を上げると、多額の小切手と共に小さな男の子を手渡した。


父がちょっと危ない仕事をしていることは知っていた。

まさかそれがマフィアだなんて思わなかったけど、父は既に引退した身。他の子どもに恵まれなかったこともあり、一人娘の私をそれは大事に育ててくれた。

だから10歳になるまで、私はマフィアのマの字も知らずに育った。それが一変したのは、同盟マフィアの最大勢力・ボンゴレファミリーに新しいボスが就任した時だ。

新しいボスは日本人で、慣れないイタリアでの滞在先としてうちの古い屋敷が選ばれたらしい。

『どうしてうちみたいな弱小ファミリーが』って、父があたふたしていたのを覚えてる。後から聞いた話によると、イタリアに慣れるまでの潜伏先としてうちがぴったりだったそうだ。

確か1ヶ月もなかったと思うけれど、沢田君はそんな事情で私たちと一緒に生活した。父も母もぎこちなくて、訳の分かっていない私だけがケロッとしていたような気がする。


「さわだ君」

「…ん、」

「こ、こら!すみません、沢田さんっ」

「さわだ君!さわだ君はうちに住むの…」


母や使用人に引っ張られていく私を見て、沢田君はいつも笑っていた。

遠くから手を振ると、どんな時でもあの気の良さそうな表情で手を振り返してくれる。

まともに話せた試しがなかったけれど、沢田君が優しい人だっていうのはすぐ分かった。だから私は、沢田君が好きだった。

けれどある日を境に、ぱったり沢田君を見かけなくなった。父も母も、行き先を教えてくれない。さよならも言えないまま、私は彼を忘れていった。



その沢田君が、いま目の前にいる。

黒ずくめのスーツの中に一人子供が紛れ込んでしまったようで、ボスとしての怖さとか威圧感とか、そういうのを全く感じさせない。

蜂蜜色の髪をくしゃ、といじって恥ずかしそうに微笑む様子は、記憶の中のあどけない少年のままだった。



「久しぶりだね、沢田君」

「久しぶり。随分大人になったね」

「…沢田君は変わらないね」

「ちょっ、それ嬉しくないよ…」


父は三年ほど前に他界し、母はそれからあまり外に出たがらなくなった。

結婚するにはまだ少し早いし、私のすることに干渉する人間は誰もいない。だからこうして沢田君と会える。

マフィアのボスに会うなんて恐ろしいはずなのに、何年経っても沢田君なら大丈夫って思えた。沢田君が頼みたいっていう何かも、きっと悪いことじゃない。

だって沢田君から電話をもらった時、なぜだか嬉しくて仕方なかったもの。彼に出会った頃の私に戻ったみたいに、胸がどきどきして、じっとしてられなくて、こんなのって今までない。きっと楽しいことに決まってる。


「さっそくだけど、頼みがあるんだ。君に男の子を預かってほしい」


沢田君の言葉に合わせて、待機していた護衛の輪の中から男の子が出てくる。

三者三様とはよく言ったもので、三人の少年は全く違う顔をしていた。

真ん中に立つ青い髪の男の子は、私には目もくれず沢田君の様子を窺っている。

右目に付けられた眼帯が痛々しかったけれど、それ以上に左目の深い青が美しい。父に連れられて一度だけ行った、あの海みたいだ。

私から見て左側、沢田君のすぐ傍に立つ男の子は対照的に金髪だった。顔の真ん中、鼻の上を一文字の傷が走り、明るい茶色の瞳は私を睨みつけている。

そして一番最後に現れた男の子は、烏の濡れ羽色とでもいうべき黒い髪に、ぐるぐると包帯を巻きつけていた。眼鏡は最近替えたのだろうか、それだけが真新しい。怯えた様子の目には、俯いているからか生気がなかった。

そして何より目についたのは、三人のみすぼらしい身なりだ。上着は裾がほつれ、ところどころ泥のような汚れで黒ずんでいる。ズボンは今にも穴があきそうだ。ぱりっとしたスーツの男達に囲まれて、その姿は不自然なほどに浮いていた。


「沢田君、この子たちは…」

「本当なら死刑になるところを、無理を言って連れ出して来たんだ」

「死刑…こんな小さい子が…?」

「おいブス女!おれらは小さくなんか…」


金髪の男の子が口を開いた瞬間、護衛の一人がボコッと彼を殴る。倒れ込んだ男の子に、『けん!』と黒い髪の子が駆け寄った。沢田君が慌てて護衛を制止する。あっという間の出来事に、私は一歩も動けなかった。


「…驚かせてごめん。なかなかこの子たちを預かってくれるところがなくて…死刑囚だから当たり前なんだけどさ、はは…」


死刑囚。その言葉は、目の前の子どもたちとあまりにかけ離れた言葉で現実味がない。一体何をしてきたのだろうか。

でも沢田くんの疲れたような表情を見たら、断ろうなんて気持ちは少しも起きなかった。



「じゃあどの子か一人でも…」

「けんになにするんだよ!ばかっ!」



黒髪の少年が、涙をいっぱい浮かべた瞳でこちらを睨む。今にもあふれてしまいそうなその目はキラキラしていて、やっぱり死刑になるようなことをする子だなんて思えなかった。

ぎゅう、と胸が締め付けられて、これが庇護欲ってやつかもしれない。



「マフィアに救われるくらいなら、僕たちは死を選びますよ…ボンゴレ十代目」



青い髪の少年がぼそりと呟いた言葉は、沢田くんを酷く傷つけたようだった。

眉間に皺を寄せ、身体の横で拳に力を入れている。

沢田くんを助けたい。それ以上に、こんな状況は我慢ならなかった。



「沢田くん!」

「なっ、なに」

「私この子たちを預かる!みーんな!みんな一緒に預かるの!」


きっと楽しいことが起きる。その予感は、きっと外れていないと思う。











だんだんお話書くのが下手になりますな/(^O^)\
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