前回のひとりごとより……

ワタシ達は“ゲルミンフード”の合成が終わるまで
連邦酒場で食事をすることにした……





連邦酒場は若い女主人が一人で切り盛りしている


ワタシ達は女主人に注文を伝えると奥のテーブルに陣取った……


入り口は人通りが多い…
転職の受け付けも在るため時間帯によっては人でごった返す……


ワタシは人と話すのが というより他人(ひと)が苦手だ……

過去に何かあったのかも知れないが きっと思い出したくないのかもしれない……

パートナーとは気軽に話せてる………と思う……




パートナーに“滅びの村”“地下工場”で初めて会ったとき
ワタシは ひどく混乱し恐怖に魂(こころ)が飲み込まれそうになっていた……
自分が認識できず 自身が闇の中消滅してしまう……そんな感覚の中
彼女は恐れるでもなくワタシを抱きしめ
「だいじょうぶ わたしがここにいるよ
こわくない こわくない……」

幼児(おさなご)をあやす様にワタシの頭を撫で背中をさすり
常闇に消えようとするワタシ(魂)を現世(この世界)に繋(つな)ぎ止めてくれたのだ……



その階にいた魔物は発狂化(バーサーク)したワタシが倒した後とはいえ
いつ復活するかわからない状況でのことだった……



事の顛末(てんまつ)をワタシ達をライバルと呼ぶ少女から しばらくたってから聞かされたワタシはパートナーが魂(いのち)の恩人であることを知る………




食事が運ばれてくるまでのひととき ワタシは ぼんやりとあの時のことを考えていた……
その件について
パートナーにたずねると顔を赤らめ あまり触れられたくない様に別の話題に切り返された………

「もぅ…… そんなことより3国国境入り口ではキャベツが採取できるよね なんでだろ?」


「……ワタシが考えるに
近くの大型農園からの種が根付いて自生してるんじゃないかな…」


「そっか〜 じゃあ菜種も?」


「おそらく…運んでいる途中にこぼれ落ちた菜の花の種が根付いて黄色い花を付け また種になりそれをワタシ達が採取する……」


「その時 こぼれ落ちた種がまた根付いて種をつけるんだね」


パートナーは嬉しそうに話す……

こんな他愛もない会話なのにワタシは幸福感につつまれる……
いや 話さなくとも2人一緒にいるだけで満足なのだ…

ワタシはそうだがパートナーはどう思っているのだろう?
ワタシは たまに不安になる…


「……なぁ」

「ん? なに?」

パートナーは笑顔を絶やさない


「……ワタシと居て つまらなくないか?」


「ん? なんで?」


「…ワタシは つまらない女だ 顔も可愛くないし美人でもない………
冒険者としても強くないし
…掲示板に表示される順位も 8000番台がやっとだ…
……ワタシと組んで後悔してないか?」

不安に耐えきれなくなり
口に出てしまった……


両手でテーブルをつかみ
椅子を蹴飛ばす いきおいでパートナーは立ち上がった

「んもぅ!! じぶんを したに評価しすぎだよ!
気づいてないと思うけど きみの笑顔はとってもステキなんだよ……

それに きみは弱くなんかない! わたし達が生きのびれるよう無理なたたかいは避けている……
でも今のわたし達ならエリアボスにだって負けないよ!!」

「……ワタシが素敵?」

思ってもみなかった答えが返ってきてワタシは面食らった……


「わっ! わっ! 今のなし!! (///∇///)

そんなことよりも
わたしは きみを選んだことを 後悔なんかしてないからね!!」


顔を真っ赤にして否定して肯定するパートナーは
愛らしかった……




「お待たせしました〜」

ちょうど頼んでいた料理が運ばれてくる……


パートナーはあわてて座り直すと赤らめた顔を下に向ける……
つい大声を上げてしまったことが恥ずかしかったのだ


「ごゆっくりぃ〜…」

ワタシ達の目前に料理を並べ終えると女主人は お盆を持って調理場へ下がって行った……



「……じゃあ 食べようか?」


「……あぁ」


ちょっと気まずい空気になったがワタシ達は食事を始めた………