夢といいつつヒロイン出てきません。若干の死ネタ。若干の暗さです。
一応10年後とかかな? 






これを見てるってことは、オレはもう死んだんだよな。
お前は泣いてる?それとも怒ってる?
きっと、怒ってるんだろうな。いつも、「そんなに無理しないで」って叱られてたから。

いつかこの日が来るってことは最初から分かってたけど、こうやって書いてみると少しさみしいね。
オレはお前を幸せにしてあげられたのかな。少なくとも、お前を悲しませた分は。


この前の誕生日、一緒にいられなくてごめん。前から約束してたのに。
お前は笑顔で送り出してくれたけど、悲しくないワケないよな。
友達のことで悩んで泣いてた時も、最後まで話を聞いてやれなくて、ごめん。
あの時お前が寝たふりしてくれなかったら、オレ、どこにも行けなかった。今さらだけど、ありがとう。


何度も、お前を解放したほうがいいんじゃないかって考えてた。
もっと普通の男と、ちゃんとお前を幸せにしてくれる男と付き合った方がいいんじゃないかって。
それでつらく当たったり、けんかして泣かせたこともあったけど、その度にいつもお前が引き戻してくれた。

本当はオレ、お前がほかの男を選んだらどうしようって怖かったんだ。
だから、お前が必ず俺を選んでくれたこと、本当に嬉しかった。


でも、それも今日でおしまい。お前もフリーになったワケだしさ。
好きなだけ遊んでいいし、どこに行ったっていい。もちろん誰を好きになったっていい。
お前くらいかわいかったら、彼氏くらいすぐできるだろーしさ。
オレの持ってるものは全部お前にあげるから、好きにしていいよ。
だから、オレのことなんか忘れて





「やっぱやーめた」


紙をぐしゃぐしゃと丸めて、投げようとして思いとどまる。
こんなもん見られたら、なに言われるかわかったもんじゃないよな。
ポケットの奥に、右手と一緒につっこむ。

「何を書いていたんだい」
「あー遺書だよ、遺書」

遺書、という言葉にマーモンが反応するのがわかる。
顔は見えないけど、付き合いも長いし感情の機微くらいは読み取れる。
ま、お互い様なんだろうけどね。


「財産分与で悩んでるなら、相談に乗るよ。手数料は取るけどね」
「そんなのいらないよ。全部あいつにやるから」


一瞬、オレじゃない男と並んで歩いてる姿が頭に浮かぶ。
…うっわ、すっげー腹立つ。
本当にそんなことがあったら、化けて出ちゃうかもしれないね。
相手の男を呪い殺して、「何でだよ」ってわめくかもしれない。


「…彼女はそんなもの、受け取らないって言いそうだけどね」


オレだけを好きでいてほしい。
オレが死んだら誰よりも泣いて、誰よりも悲しんで、それから、ずっと想っていてほしい。

そんな風に書いたらあいつ、きっと、本当にそうするんだよ。
でもさ、そしたらあいつ、幸せになれないだろ。


「いーんだよ、そんなもんしかないし」


ねぇ、オレ、あとちょっとだけお前といてもいいかな。
あと、ちょっとだけ。