スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

柳夢

ヒロインの名前は『唯』です。唯ちゃんありがとう\(^O^)/

同棲してる設定・柳が会計士目指してる設定です。










恋人ができたらしたいことがある。それは、手をつないで一緒に眠ること。

大好きな人と手をつないで寝たら、一緒に幸せな夢が見られるんじゃないか、なんて。そんなの子どもじみてるって思いながらも、心のどこかで信じている。


だから蓮二さんに『一緒に寝るのはいいが手はつなげない』って言われた時は、ちょっと悲しかった。誰かに触れられていると、どうしても気になって落ち着かないんだそうだ。その気持ちはなんとなく分かるし、蓮二さんが嫌がることはしたくない。

だからこの小さなあこがれは、心の中の引き出しにしまっておくことにした。そんなのなくたって、私は蓮二さんがすきだもの。



蓮二さんはお父さんの影響もあって、会計士の勉強をしている。そしてそれと同じくらい、テニスをがんばっている。

会計士の勉強は遠征がないけれど、テニスは遠征がある。1週間以上帰って来ないこともあるし、だから私はテニスより会計士の勉強の方が好きだ。

そう蓮二さんに訴えたら、蓮二さんはいつも困ったような顔で笑う。その顔がとびきり優しいから、私は蓮二さんをそれ以上責められない。



明日からの合宿で、初めてのクリスマスは一緒に過ごせなくなってしまった。

本当はケーキも予約しちゃったんだけど、家族で食べることにしようかな。蓮二さんの好きそうなのを選んじゃったから、お母さんにはばれてしまうかもしれない。




「唯、帰ってからクリスマスをやってもいいんだぞ」

「ううん、大丈夫」




『初詣は一緒に行ってね』言ったら、蓮二さんは『約束する』って抱きしめてくれる。それだけで十分なんだけど、やっぱりちょっと寂しいな。

おやすみなさいのキスをして、そっと蓮二さんから離れる。

しばらくしてから、薄く目を開けると、子どもみたいなあどけない寝顔が目の前にあった。


投げ出された大きな手は、ぎゅっと毛布の端を握っている。

ちょっとした悪戯心がむくむくと湧いてきて、そっと毛布に手を伸ばす。寝ている蓮二さんに気づかれないように、じりじりとそれを引っ張った。


「ん………」




毛布がなくなった瞬間、蓮二さんがぴくっと反応する。一瞬どきりとしたけれど、空いた手のひらにするりと自分の左手を滑り込ませた。どきどきしながら蓮二さんの表情を見ていると、ちょっと眉間に皺を寄せて、それからきゅっと私の指先を握りしめる。

なんとなく落ち着いたのか、蓮二さんはそのあとすぐに幼い寝顔に戻った。くーくー、と小さな寝息。

その姿があまりに可愛いのと、してやったりな気分もあって、笑いそうになるのを堪えるのが大変だった。私の気持ちを知ってか知らずか、蓮二さんの表情がまた和らいだ気がする。

蓮二さんの手は、赤ちゃんみたいに体温が高くてあったかい。そのあったかさが私にも伝わってくるみたいで、ゆるやかな眠りに誘われた。






「…唯、行って来るからな」




頭の上から降ってきた声に、現実に引き戻される。蓮二さんをちゃんと見送ろうと思っていたのに、寝過ごしてしまったらしい。慌てて起きようとしたら、肩を押されてベッドに戻された。

既に細身のウィンドブレーカーに身を包んだ蓮二さんが、ずっと上から私を見下ろしている。




「蓮二さん、ごめんね」

「謝らなくていい」

「…気をつけてね」

「あぁ」




気の利いたことなんてなんにも言えなくて、当たり障りのない言葉ばかりが出ては消えていく。ずっと幸せな夢を見ていたのに、急にそれが夢だと気づいてしまったみたい。昨日は子どもみたいだった蓮二さんは、今はずっと大人びた目で私を見つめている。

もしかしたら、昨日のあれは夢だったのかもしれない。心の中の引き出しがふいに開いて、それが私に見せた夢。そうだったのかもしれない。




「あのね、蓮二さん…昨日、蓮二さんと手つないで寝たんだよ」

「…?」

「覚えてる…?」




なんでだろう。目頭がきゅーっと熱くなってくる。

蓮二さんは私を見て、またあの困ったような笑顔で前髪をくるりと梳いた。




「ずっとお前だと、分かっていたさ」




蓮二さんは前髪を一房掬うと、ちゅ、と小さくキスを落とす。

『まだ早いから寝ておけ』という声に、上手く答えられたか分からない。あんまり嬉しくて、たまらなかったから。


蓮二さんが帰って来たら、またこっそり手をつないでみようか。そのくらいのわがままなら、許してくれる気がする。






















はすぢさん書くの楽しいッス\(^O^)/
前の記事へ 次の記事へ