本当は限られた時間の中でしか許されないことだったんだ。
それに気づいたのはつい最近だ。
家族は私が生まれたことを祝福してくれた。
それなりの、いや…溢れんばかりの愛情を注いでくれたに違いない。
すると、どうだろう。
愛を受けるのに慣れてしまった私。
やがて大人になる時期がきた。
上手くいかない人生に立ち往生、挙句の果てに「疲れた」と全てを諦めたように呟く。
なんのために、家族が祝福してくれたのか。
分からない。
生まれたときは何も分からなかったから。
誰が祝福していたかなんて分かりっこない。
どうして家族はまだ君のことを支えてくれているんだろうね?
保険じゃないかな?
万が一のときに私に面倒を見てほしいから。
本当にそうだと思う?
どういう意味?
家族だから、仕方がないから、君を手助けしている?
そうだ。
仕方のないことだと、向こうは受け入れてるんだ。
そんなに嫌なら切り捨てればいいのに…
そんなこと思ってないのは自分が一番よく分かっているんじゃないかな?
君は、家族が仕方なしに居てくれていると思っている。
けれどそれは間違いだ。
彼らは生きているからそこにいるんだ。
たまたま君もそこにいるんだ。
家族だからいっしょにいるように見えるんだろう。
でも本当は偶然居合わせただけ、たったそれだけなのさ。
それだけで君は今まで生かされてきたんだ。
生きることを、偶然居合わせた彼らに"許されて祝福を受けた"。
君は生まれながらに幸福を手に入れていたんだ。
受けるはずのなかった幸福を。
幸福を受けた君の成すべきことは一つ。
支えてくれた家族と向き合うことだ。
君が君として生きていけるのは、彼らがいなければ有り得なかったのだから。
死が怖いからと言って彼らから目を背けるのは、それこそ罪と言うものだろう?
向き合うんだ。恐れるな。これは君が生を受けたときから定められた試練なんだ。
"運命"とも"宿命"とも言うけどね。誰もが乗り越えていかなければならないことだと、私は思っているよ。
あなたは、誰?
私は君であり、私だよ。いつも君を支える者の一人だ。
どうか理解してほしい。そして受け入れてほしい。君は一人ではないということに。
2014-6-29 01:08
手が届かないような気持ち。
分かってる。無駄なことだなって、分かっている。
でも考えてしまう。
「もうすぐ死ぬの? 」
そんなことストレートに聞けやしない。
でも着実に、貴方は自分の死を受け入れつつある。
それを周囲に、徐々に知らせている。
ずるい、と思った。
自分は死んで、あとは任せるみたいな、無責任なことは。
ひどい、と思った。
けれど本当にひどいのは私の方じゃないのか?
なぜ、貴方がそんな準備をする羽目になったのか、よく思い返してほしい。
私はどれだけ貴方の時間を奪っただろう。
私はどれだけ苦労をかけただろう。
私はどれだけ貴方の身体を蝕んでしまったのだろう。
取り戻したくても取り戻せないもの、それらを積み重ねてしまったのは、紛れもなく私だった。
私を生かしてくれた貴女が、私の元を去るのは許せない。
でも貴方は、そんな風に考える私を許しはしないだろう。
呆れた顔をして「受け入れろ」と、言うのだろう。
「しかたのないことだから」
貴方は笑ってさえ見せるかもしれない。それがひどく恐ろしい。
恐いんだ。怖いんだ。こわいんだ。
何もかもがこわくて聞けない。
それを聞いたら、自分でスイッチを押してしまうかもしれない。
もう後戻りできないところまで来ていると分かっていても、私はスイッチを押したくない。
初めから決まりきった物語なんて辿りたくなかった。
まだそこにいるのに、手を伸ばせば届くのに。
声が出せない。
話せばきっと伝わるのに、伝えられることが恐ろしくて踏み出せない。
踏み出せば、踏み込まれたらきっと死なねばならない。
死んで生まれ変わらなければならない。
貴方のいなくなった世界で、強く生きるために、貴方の死を理解しなくてはならない。
貴方が去るのなら、私も私を捨ててしまうべきだ。
生きるために。
まだここにいる貴方と正面から向き合いたい。
2014-6-29 00:46