ワタシ達はマーロ共和国にマイホームを持つことを
国王より許された……


そのため 共和国の中で
我が家となる物件を探す事にした……



ちょうど その時 共和国のメイド募集を聞きつけ
シュリンガー公国より
公国メイド隊の1人
オカッパの青黒色の髪を頭頂で纏(まと)め 糸目にメガネをかけた者が 我が家の管理の仕事に 就きたいと公国メイドを辞めて来ていた…


公国は今 先の連邦との戦により大公は行方知らず……その不在を お側付きのメイド隊の長(おさ)が執務を代行している………
とても人員が余っているとは思えないが……


………………



公国メイド隊とは何度か会っているし 人柄も信用している……
お互いに助け 助けられた仲でもある………



…………………




彼女が 長(おさ)からの密命を受けていても仕方ない……

たとえ それがワタシの監視だとしても………


彼女に家の管理を任せることにワタシは異存はなかった………



「どうしました?
ご主人様……」

ニッコリと微笑む彼女……



「……いや 何でもない……」


ちょっと〜大丈夫なの?彼女……

ワタシのパートナーが声をひそめて 話しかけてくる

ワタシ達は家に関しては素人……
詳しい者に任せた方がいい……
彼女とは知らぬ仲ではない……


……まぁ きみがそう言うなら……
………


パートナーは納得しかねるようだった……



「……では 物件を案内してもらおうか……」


「かしこまりました
ご主人様……

では ご案内します……」




ワタシ達はメイドに連れられてマーロ共和国で我が家となる物件を探してまわった……



…………しかし なかなか 物件は見つからなかった



「ねぇ いい加減 どれかに決めようよ」


とうとう パートナーがしびれをきらした…


「……しかし………
何かピンと こないんだ…」

家の管理担当を申し出た
メイドの紹介する家は どれも素晴らしいモノだった……

しかし ワタシには何か しっくりこない……
……うまく言えないが

………


そんな中 町外れまで来ると 石造りのブロックを積み上げて作った 崩れかけの建物が目についた……



…………


長い間放置されていたのだろう 屋根もすっかり落ちて壁も所々(ところどころ)崩れ 石造りのブロックが 庭に散らばっている……




……………



「………この建物は?」



何かワタシは気になり
メイドに訊ねる……


彼女は少し考え


「……そう……
…ですね…………
かなり昔に建てられた集会所?ではないでしょうか?
昔は人々で賑(にぎ)わっていたのでしょう……

……朽ちた今でも 人々の帰りを待っているのかもしれません……」


黒い柵で囲まれた その建物 元はかなり大きかったようだった………



「……中を 見てもいいだろうか?」



「えっ?
中に入るの?」


パートナーが驚く 見た限り とても人が住めるとは 思えないほどの荒れ果てた建物だったからだ……


「ブロックが落ちてきたら あぶないよ〜〜

……ここは やめよう……
……ねっ?」


「…ここからでは 建物の全体が見えない……
やはり敷地内に 入ろう…」


「……ねぇ
メイドさん 止めてよ〜」


パートナーはメイドに すがり付いた……



「中に入られますか?
ご主人様……」



「……あぁ 是非とも中を見たい
……それに もしもの時は
守ってくれるのだろう?」


「もちろんでございます
ご主人様を お守りするのも メイドの務め……
ご安心ください」


彼女はカバンから杖を取り出すと背中に背負う……


パートナーはあきらめたのか 無言でため息をついている…



「ふふ…頼もしいな
やはり 公国メイド隊は
戦闘も出来るという噂は 本当だったのだな……」



「はい ときおり 戦闘訓練のため時渡りの搭にこもることが ございます……
冒険者たる ご主人様には とても敵(かな)いませんが……」



「からかわないでくれ
……ワタシは冒険者としては弱い部類だ……
掲示板の冒険者順位でも ランク外だ……

今のワタシ達では 君(きみ)1人にも 敗北するだろう……」


「………これは失礼しました 気分を害されたのであれば お詫びします」


彼女は頭をさげる



「いや 頭をあげてくれ……別に不快に思ったわけじゃない……」


「そうそう あぁいう 言いかたしかできないから
メイドさん 気にしないで…」


パートナーが助け船を出してくれる……


「…そう……でございますか……
念のため スキル“ウォール”をかけておきます
失礼を お許しください」


スキル“ウォール”……
一定時間 範囲内全員の防御力の上昇
ダメージを受けていたら わずかながら体力回復も出来る 無くてはならないスキル……




こうしてワタシ達は 朽ちた建物の建つ 敷地に侵入した……………