ワタシ達は マーロ共和国で自分達の家を改築(ハウジング)していた………




「大変です ご主人様!!
建材が 足りません!」



ワタシの家を管理する 元シュリンガー公国メイド

…細い目に大きな縁(ふち)なしメガネが良く似合う…

が声をかけてきた……

相変わらず服は公国メイド隊のままである……



「…!?
倉庫に入っていた建材の備蓄が……
底を…ついた……?」


ワタシはメイドに聞き返す……



「はい…ご主人様
この建物の大きさでは
手持ちの建材や家具では とても足りません……」



「……そうか

……少し…困ったな……」

建築(ハウジング)の方(ほう)に注視してこなかったツケが こんなところで
まわってきたのだ……



「もともと 手持ちは少なかったよ……

……どうする?

石造りのブロック
錬金合成する?……」


パートナーが提案する……


「合成するにも素材の 石のブロックがないけど……」


石造りのブロックは石のブロック5個 鉄鉱石1個から20個 合成する事が出来る……


石のブロックは迷宮の奥から採掘しなければならない……



「……どう…する?

………………

無い袖(そで)は振れない……か」


ワタシは考えこむ……



「ご主人様……いちど街に出られてみては いかがでしょうか?」



「…なぜ…街に?」


メイドの提案にワタシは首をひねる……


「そうだよ……採掘に いかなきゃ……」


パートナーは試作ピッケルを取り出し点検を始める
採掘に必要なものだからだ……



「ご主人様 寝室の方(ほう)は 完成の目処(めど)が たちました……

気分転換にアブル連邦城塞都市に行かれては どうでしょう……
何か良いアイデアが浮かぶかもしれません……」



「そう……だな
ここのところ 篭(こも)りっぱなしだったな……

すこし 出かけて来るか……」



「そういえば そうだったね
連邦まで行くなら 途中で採取もして行こうよ」



「それならば アロエベラをお願いします お茶もきれそうですので」


アロエベラは 錬金合成で紅茶に出来る…
建材の土のブロックと組み合わせれば草のブロックにも合成出来るのだ……



「……わかった 採取も兼(か)ねて連邦へ行こう…」



「うん 行こう!!」



「行ってらしゃいませ
ご主人様……

家の安全は 私がお守りします」



ワタシ達はメイドに見送られ アブル連邦 城塞都市を目指す……


もちろん その道すがら
採取も忘れない……



城塞都市に入城すると
人で賑わっていた……
ちょうどバザーが開かれていたのだ……
ここでしか手に入らないモノを求めようと 近郊から様々(さまざま)な人々が集まって来ている……
そのバザーの店先で 品定めをしている人物がいた……
人混みに押され ワタシ達はその人物の横に流れついていた………




どうやら家具の品定め中にワタシ達はその人物と ぶつかったらしい……

ワタシが ぶつかった非礼を述べると
その人物も詫(わ)びを述べて来て ワタシ達は お互いの事を語り合った……



その人物…(彼)はコチラとは違う世界より持ち主の望みを かなえる魔法の青い鏡によりコチラの世界に(空間跳躍)とばされたという……
パートナーは半信半疑だが納得したようだ……
ワタシはじゅうぶん有り得る事を知っている……

…数ヵ月……前にも似た事があったからだ……
この時の事をパートナーは覚えていない……

一緒に行動していたにも関(かか)わらず……

ただ その時手に入れたレシピが残るだけ……

パートナーが管理するアルバムにも記載が無いのだ…

おそらく 今回の件も パートナーは忘れアルバムからも抹消されるだろう……





ワタシ達は 彼から家具調達の依頼を受けた……

ワタシ達にとっては
素材さえあれば錬金合成出来るモノばかりだが……
彼にとっては 大変珍しいモノらしい……


ちょうど市場のバザーが開かれ それらの家具は
特売券と交換で手に入れることができた……



錬金合成するより特売券と交換するほうが早い……


そのためワタシ達は特売券を手に入れる為“広がる平野”に
下った……
そこは 特売券 交換会場にもなっていたからだ……

魔物を倒すと 報酬として 特売券がもらえる……
これはアブル連邦が主宰する祭り(イベント)らしく
警備と受け付けには 連邦兵士や騎士がいた……
イベントと称して魔物の大規模討伐が真の狙いだと後(のち)にわかったのだが……




冒険者として依頼も受けているワタシ達は 魔物討伐 に向かった……



ほどなく 特売券は集(あつま)り

異世界からの 彼 の依頼も達成する事が出来た……



彼の 異世界の家具を手に入れたい という望みは 叶(かな)い
彼は自分の世界へ
手に入れた家具と共に
帰って行った………



彼の依頼の報酬の1つに
彼の家の設計図があった……



建材 家具 が揃(そろ)えば彼の家と同じような建物 家具配置が出来るらしい……



祭り(イベント)は まだ終わっていない……

ワタシ達は 建材 家具 を手に入れるべく
特売券集めを続けた……


特売券を集めると ハウジングくじ が出来る これにより 建材と家具不足の問題が一気に解消したのだ…


ワタシ達は イベントが終わるまで 魔物討伐を続けるだろう……




メイドの

「ご主人様のお家が より良きものに なりますように……」


という望みをかなえるためにも………



ある冒険者のひとりごと……19 マイホーム その3〜建材を求めて〜 〜終わり〜