ワタシ達は 朽ちた建物の敷地内に入った……



「……庭が 広いね……
それに 見て!リンゴが実(みの)ってる」


建物の周りをグルリと回る……
あちこちに石造りのブロックが転がるなか
庭の四隅にリンゴの大木を見つけ パートナーが はしゃいだ………



「以前のかたが 植えられたのでしょうか?
立派なリンゴの木ですね…」



「手入れをする者も いないだろうに……
実を付けるんだな……」



ワタシ達は感じたことを述べ合う……


次にワタシ達は 建物の中を確認する


といっても 壁が崩れ落ちているので 外も中もないのだが………


出入り口は東西南北四方にあり 南北よりも東西に長い造りの長方形建築だった………


建物の敷地内には 北西と北東に石造りブロックを積んだ小部屋?があった
北東の部屋は まだ四隅の壁が残っていた
見上げると 土に覆(おお)われた天井が見える……
外から見れば おそらく草が繁(しげ)っていることだろう……



「ここは 何の部屋かな〜」

パートナーは興味津々(きょうみしんしん)だ……



「床まで石造りのブロックで覆われているな……」



ワタシにも皆目(かいもく)見当(けんとう)が つかない……


「どう見る……?」


ワタシはメイドに訊(たず)ねる…



「……そう……ですね」

床の中心に香(こう)を置いて……

そのまわりで瞑想(めいそう)でも されていたのでは ないでしょうか……」



「…なるほど 立つと外が見えるが 座ると見えない…
座って使う部屋というわけか……」



「きっと 水浴びに使ったんだよ…」



「……沐浴(もくよく)場か……」



パートナーの発言に ワタシは答えた



「いずれに しましても
この部屋を設置し 実際にどう使われたのかは
私たちには はかりかねます……」


「…そうだな どう使うかは家主(あるじ)次第……ということか……」



「そうでございますね……使われる側も素敵なご主人様にめぐりあいたいと思うものです…」





……そして北西の区画には石造りのブロックを積んだ4本の柱とその頂上に天井?床?
の枠組みだけが残っていた………



「……ふぅーむ」


ワタシはその区画を見て考えこむ…



「どうなされました?
ご主人様……」


メイドがワタシの顔を覗(のぞ)きこむ……



「あの上に……寝室を作りたい……」



「えっ?
むりだよぅ…」


パートナーは驚く……




「あの上に……ですか?」


メイドも驚いたようだ……


「……出来ないのか?」



「……いえ……建材と家具が あれば……出来ると思います……」



「…建材も家具も倉庫に あったはず……造(や)ろう……」



「えっ…ちょっと ココに決めるの?!」



パートナーが慌(あわ)てた……



「…?……
無論(むろん) そのつもりだが?」



「ココに決めるって 聞いてないよぉ〜〜」



「初めて 見たときから…
ワタシの考えていた事と
条件が 合うんだ……」



「その……条件って?」



「…ワタシは これでもボンドマスターをしている……」



「うん 知ってるよ……
それらしい ことは何もしてないけど……」



「そうなんですね…
ご主人様……」



「………ワタシは ボンドメンバーが集まれる 広い場所が欲しいと思っていた……」



「それで 何にもない この家?
……を?」



「……あぁ
ここを改築してボンドの集会所に 出来ないか?
……と考えた」



「それじゃあ わたし達の住む場所は?」



「……さっき寝室に出来ないかと考えた場所で十分(じゅうぶん)だが?」



「えぇ〜!? それじゃあ寝るだけじゃない!!

こんなに広いのに……」



「?……宿屋と同じだが…
いや 宿代が無いから 同じじゃないか……」



「違うよ ぜんぜん違う……
家というのは こう……
うまく言えないけど
特別な場所なんだよ…」



「?……ワタシ達は冒険者だ 冒険をして 宿で食事と睡眠を取って また冒険に旅立つ……
本当に家は必要なのだろうか?」



「……必要だよ!

家っていうのは こう……
なんて 言っていいか…大事な……場所?」



お互いに自分の意見を通そうと加熱しはじめていた……



「差し出がましいようですが……
まず ご主人様の思う通りにハウジングされてみては いかがでしょう……
その後(のち) パートナー様の意見を取り入れてみては?……」



ワタシ達の意見の食い違いに メイドが話の折り合いの案を提案してきた……



……!!



「いや……すまない
つい我(が)を通そうとしてしまった……」



「うぅうん……
わたしも じぶんの考えを おしつけて……

わたし達は お互いパートナー……
そこに上下はないよ……」



お互いに気まずくなる前にメイドに助けてもらった……

彼女が いてくれて よかった……




ワタシ達は3人で協力してこの建物の改築(ハウジング)に取りかかった………