……………

…………………


荷台に伝わる
4つの車輪からなる単調なリズム………
幌(ほろ)の隙間から入ってくる
暖かな陽気(ようき)……

実に快適な旅だ

膝(ひざ)の上で
安らかな寝息のパートナー………
それを見つめる
ワタシにも 心地よい微睡(まどろ)みが そこまで来ていた……



「共和国(マーロ)に着いたら起こしてくれ……」



ワタシは 御者台に座る
魔物に声をかけると
チップに いくばくかの 賢者石を渡す……

ツノ牛を操(あやつ)る
イヌの魔物
“アラビーヌ″は 軽く頷(うなず)き 石を受け取る

共和国(マーロ)では ヒトと同じく 魔物も仕事に就いている
通貨はZellだが やはり魔物にとっては賢者石の方が喜ばれる
魔法の発動に 賢者石を消費するからだ………
それゆえに 料金とは別に チップ(賢者石)を渡すのである

また 賢者石を介(かい)しての約束事は
魔物にとって
絶対遵守(けいやく)でもある

これで ワタシが寝込んでも 共和国(マーロ)を降り過ごす心配も無いわけだ……



ワタシは 目を閉じ

内装(ハウジング)……

魔法書(グリモア)……

絵画(え)………

のことを考える

夢と現(うつつ)を行き来するうちに
いつの間にか
夢の中に入っていた………



……………………



果てしなく広がる
青い海原 テトラ海……
そこに面した白い砂浜 リプル海岸
そこには 二千年以上前に栄えた
海洋王国ミルトシュタイフの遺跡が残っている……

その沖合いに 錨(いかり)を下ろし停泊する1艘の船……

その船の名は“セント・セイナ号″……

船上の少し高い位置に置かれた操舵所……

舵輪を握るのは
“キャプテン・セイナ″
この船の船長である……
白い肌に ふんわりとした金髪 服から覗(のぞ)く
腕脚は 強靭な筋肉に程よく脂肪が載(の)っているのが見てとれた………



「ギルマス!

気がついた?」



「…ギル……マス…?」



彼女の声に ワタシは思わず 聞き返した



「どうしたんや 二代目!

あんさんが しっかりせんと わいら 困るやんけ」



「えっ…

に…二…代目……?

…えっと………貴方(あなた)は?」



「どないしたん?

先代から このギルド

“君の物語″を受け継(つ)いだんやないかい!

それに ワイのこと忘れたんかい!

ワイや! ワイ!!

副長の“パン王″や」



頭に載(の)せるには 大きすぎる王冠(かんむり)?を肩から斜めに たすきに掛け
旅人の外套(赤黒いマント)を纏(まと)った男が捲(まく)し立てる…



「…えっと ごめんなさい…

王…さま? が

…副…長をしてるんです?

そういえば 王冠…?
それにマントをしてるわね………

…………………

…船酔い したのかしら
ちょっと ぼーっとしちゃって……」



「組長は いつも ぼんやりしてる……」



「貴女(あなた)は?」



「夜飛(よぴ)……

サムライをしている」



「その服装は サムライ?……なのかしら 可愛くて 格好いいわ」



幼い顔に 尖(とが)った耳 白っぽいが よく見ると薄い藤色髪の小柄な少女……

彼女は黒い異国の服を纏(まと)い
首に巻いた同色のマフラーを 時おり吹く風にまかせ
静かに佇(たたず)んでいる


…………………!?


何やら近くに気配(けはい)を感じ
ワタシは振り向く………



「えっ?

ワタシ………?」



ワタシの視界に ワタシが映る……


白い肌に 艶のある檸檬(れもん)色の髪……
首元で2つに分け それぞれを螺旋(らせん)に巻いて垂(た)らした
アンダーロールの髪型………
銃士(ガンナー)として ワタシが選んだヘアカラーと髪型……

それは 間違いなくワタシだった……………



「……キルッシュ

ふざけるのも そのくらいに……」



「せや せや ウチらの二代目 ビビっとるやないけ」


夜飛(よぴ)とパン王の声に
ワタシを 見つめるワタシの姿が みるみる変わってゆく…………
やがて それは黄緑(ライムグリーン)色の髪をした少年の姿になった………



「双剣使いの キルッシュ………

あんた 本当に ボク達の
ギルマスかい?」



「………たぶん 本物
特に おかしな所は無い」



「せや せや 間違いなく 二代目ギルマス みゃこちゃんや!」



「どう…だか

おおかた
ボク達を騙(だま)すため カエルムが化けてるんじゃないかい?」



「いや いや
あんさんが それを言(ゆ)うんかい!!」



「船長(キャプテン)は
どう思う?

船の上では アンタが絶対だし…
セイナ(アンタ)の判断に ボクは従(したが)うよ……」



「うーん そうねぇ…

あたまが混乱してるのかも
さっきの“リジッドテイル″の一撃を もろに食らったから その後遺症かしら?
じきに 戻るんじゃない?」


そういえば………

…なん…だか……頭痛がする…………



「♪…………夜〜

それは 黒と闇〜〜

世界の真実(まこと)は そこに〜〜〜♪」



「………?」



キャプテン・セイナは
舵輪をから手を放し
その両手を広げ
突然 歌いだした………

ワタシの中で 何かがザワつく………



「♪………美しきは
闇(や〜み)〜〜

暗き闇こそ美しい〜〜〜


夜〜〜

美しき夜〜〜〜


ワタシは〜〜

その中に生まれし

黒き闇を照らす〜
忌(いま)まわしき〜〜
光の申(もう)し子〜〜〜〜

我が名は〜〜
美夜子(みやこ)〜〜〜

美しき夜を生きる子〜〜〜♪」



セイナは高らかに歌った………



「あ〜〜〜(///ω///)

止めて

やめて

歌わないで……

そんな 恥ずかしい歌」



「だって 美夜子(みゃこ)が自己紹介の時 歌ったのよ

いいじゃない」



「あのとき………確かに 歌っていた」



「美夜子(みゃこ)ちゃん
また歌ってんな
ワイ また聞きたいねん」



「実に 面白い歌だったよね
もう歌わないのかい?」



ワタシは 恥ずかしさに
白い肌を真っ赤に染め
両手で顔を覆(おお)う

どうして あのとき こんな詩(うた)を歌ったのか………
思わず その場に座り込んでしまう
あぁ……
この場から 直ぐにでも逃げ出したい………



「組長!

モンスター(敵)だ!!」



“夜飛(よぴ)″の声に ワタシは 顔をあげる……


色鮮やかな羽を持つ 鳥のモンスター “リジッドテイル″
半透明の体に巨大な目玉と羽を持つ“アイフロート″

このリプル海岸付近に 生息するモンスター………
どちらも空中に いるため 剣を当てるのは至難の業(わざ)だ………



「船長(キャプテン)!
船は 動かせる?」


即座(そくざ)にワタシは セイナに訊(たず)ねる



「錨(いかり)を下ろしてるから 直ぐには無理ね」



ワタシは少し考える……



「…………

副長!

夜飛(よぴ)!

キルッシュ!

ここで撃退(げきたい)するわ……

セイナ!
いいかしら?」



逃げるのは無理のようだ ワタシは 船に近づくモンスターを迎え撃つことにした……



「りょうかいや 二代目!
ワイが ばっちり
しばいたるで〜」



「わかった……ここで食い止める」



「ふん!
ボクの双剣の餌食(えじき)にしてやるよ」



「りょうかいよ
美夜子(みゃこ)

船は ここに固定するわね」


なんとも頼(たの)もしい
限りだ……



「みんな…… アイフロートに気をつけて!」



腰のホルスターから 剣銃(ソード・バレット)を引き抜き
ワタシは ギルメン(なかま)に声をかける……



「わたしも 剣を振るおうかしら」



両手剣を 軽々と片手で振り回し
セイナがウォーミングアップに入る



「ええ…

頼むわ セイナ……」



「まかせて
美夜子(みゃこ)!」


ワタシ達は 武器を構(かま)え 空中に存在す(い)るモンスターと対峙(たいじ)する



………………



戦闘(たたかい)の末(すえ)
ワタシ達は なんとか
リジッドテイルとアイフロートを撃退することに成功した……

しかし すでに陽は傾き 夜の闇がそこまで来ている

モンスターの さらなる襲撃を避ける為 ワタシは船を さらに沖へ移動させる事を提案した…………



「このあたりで いいかしら?」



リプル海岸に建つ ミルトシュタイフ遺跡が 小さくく見える沖合いに船を停泊させ キャプテン・セイナが問う



「ここまで来れば 大丈夫でしゃろ

いや〜 さっきは ひどい目に おうたさかい

ほんま アイフロートは こりごりや…」



パン王が 愚痴(ぐち)っている
アイフロートの催眠光線を浴びると戦闘中でも眠りに落ちてしまうのだ
そこを リジットテイルの硬いくちばしで つつかれるのだから たまらない……
二種類のモンスターの波状攻撃に ワタシ達は苦しめられたのだ………



「メリーダ村の ヴィット小隊長には 明日 報告するとして……

今夜はここで 夜を明かしましょう」



ワタシは船上での宿泊を提案した



「夜になると モンスターの数が増える…

アルメリー平原を抜けてメリーダ村を目指すのは 危険…」



夜飛(よぴ)は賛同のようだ



「いっそのこと このまま 東のクルティエ大陸を目指すってのは どうだい?」



「たしかに サルヴィス大陸(ここ)は カエルムモンスターの進行が進んでるわ

だけど……
東の大陸(クルティエ)が 安全……とは言えないと思うの……

それに………」



「言ってみただけだよ ギルマス…

……それに
ワタシ達は統合騎士団(テンプルムナイト)に所属してるから……
でしょ
わかってる わかってるよ」



キルッシュの言う通り
ワタシ達は 騎士団に所属し
便宜(べんぎ)を図(はか)ってもらっている……
しかし…断れない依頼もくる
今回の件がそうだった………



「船上(ここ)も冷えてきたわ

続きは船内(クラブ)で話しましょう」



セイナの言う通り 陽が沈み周辺(あたり)が闇に包まれると 身体(からだ)が冷えてきた……



「そうね…

船内(なか)に入りましょうか……」



「せやな

はよ 行こ 行こ

船外(そと)は寒(さむ)ぅてかなわんわ

ワイ
一杯やって 早(は)よぉ暖(あった)まりたいわ」



「わたしも 呑みたい…」



「いや 酒より 食事だね
パンと 肉が食べたい」



「ほいほい

夜飛(よぴ)き も一緒に呑(の)もなぁ…

それにしても
なんや キルキル

パンかいな

米! 食え 米!

米は力やで」



「名前は パンなのに

米?

相変わらず 副長は おかしなやつ」



「ちゃう ちゃう

ワイの 名前は 物語に登場する英雄から取ったんや

食べ物のほうとちゃうねん」



「あっ!

ワタシ 知ってる

呪われた島“ロ島戦記″でしょ

最初の“灰の魔女″だけ読んだわ」



「組長は 物語が好きなんだ…」



「そう……

読むだけでなく
ワタシも
いつか物語を書いてみたいわ…」


ワタシ達は 話しながら階段を降り 船内の狭い通路を進む



「みんな 先に入室(はいっ)てて 着替えてから行くから」



「ほいほい〜

セイちゃん また 後(あと)でな〜」



「了解だよ 船長(キャプテン) 」



「船長 先に行ってる…」



「セイナ またあとで……」


セイナと別れ ワタシ達は
さらに進む………



「着いたで

ここや ここ」



「…えっ……と

“ドリーム・クラブ″?」



扉に掲(かか)げられた
船室名(プレート)の文字は そう読めた………



「そう…船長 自慢の部屋」


「部屋(なか)に 入ろう」



パン王… 夜飛… キルッシュ… と話しながら次々と
部屋(ドリームクラブ)に入って行く……

ワタシは 最後に その扉をくぐった………



「すごいわ……これは…」



思わず感嘆の声がもれる

部屋の中央には 曲線ソファを4つ繋げてドーナツ型にしており その四隅には
3人掛けソファ(白)(赤)が置いてあり その装飾は豪華だ……

赤と白と黒 そしてステンドグラスのブロックを組み合わせて壁を作り 豪華さを演出している……天井にはシャンデリアが吊り下げられ 部屋の華(はなやか)さに貢献(こうけん)している………

ブロックを組んで作った中央のテーブルの上には
グラスが並び シャンパン・タワーが輝(かがや)く……

壁には 石造花鉢も飾られ
そこに カラー・ブロックで組まれたテーブルを置き
様々(さまざま)な料理が並べられ 美味(おい)しそうな香りを漂(ただよ)わせていた………



ワタシ達は 各々(おのおの)好きな席に着き 船長(セイナ)の登場を待った

このギルドの責任者(マスター)は ワタシだが
船の上では 船長(キャプテン)の方(ほう)が責任者だ……

彼女を差し置いて ワタシが乾杯の音頭を取るわけには いかない……



「みんな お待たせ〜」



その声に 扉のほうを見ると
先ほどの勇ましい船長姿とは うって変わって緑色のドレスを纏(まと)った
セイナが優雅(ゆうが)に立っていた………



「セイちゃん 待(ま)っとたで」



「船長 早く …」



「それより船長(キャプテン)!
飯だよ 飯(めし)!」



「セイナ…
素敵なドレスね……」



「ふふ…

みんな! グラスを持ったかしら?」



赤く透き通った果実酒を満たしたグラスを
緑色のドレスと同色の長手袋(ロング・グローブ)を嵌(は)めた手に取るセイナ……

それに合わせ“君の物語″のギルメン達が次々とグラスを手にした………



「それじゃあ……

セイナ…

乾杯前の挨拶(あいさつ)を お願い……」


ワタシは セイナを促(うなが)す………



「みんなの おかげで
モンスターとの 戦いに
勝つことが できたわ

わたし達の船 セント・セイナ号 の被害も少なくすんだわ

ありがとう みんな!」



「せやな ワイら みんなの勝利や!

もっとZ(ゼル)も
稼(かせ)がな あかんし
武器 防具 コアの為の素材集めも せな あかん

ワイらのギルドも まだまだ これからやで」



「ボクたちが協力すれば

ざっと こんなもんさ

これからも このギルメンで やっていけるさ」



「わたしは 武者修行として
このギルド(組(くみ))に所属してる…

敵に打ち勝ち 強くなること

あと 旨(うま)い酒が呑めると嬉(うれ)しい…」



ギルメン達が 次々と言葉を述べる



「美夜子(みゃこ) 締(し)めて…」



「美夜子(みゃこ)ちゃん

頼むで〜」



「ギルマス 早く!」



「組長… 」



セイナ…パン王…キルッシュ…夜飛(よぴ)……
4人の視線が ワタシに注がれる……


ワタシは 手にしたグラスから立ち上(のぼ)る
発酵した果実の芳醇(ほうじゅん)な香りを
少し楽しむ…

そして 話し始めた…



「先代の“そら″から
引き継いだ“君の物語″………

このギルドと同じく
まだまだ弱くて 頼りないワタシだけど ついてきてくれて みんな ありがとう……

…………

これからの“君の物語″に……

乾杯!」



「「「「乾杯!!!!」」」」



ワタシ達は 高く掲(かか)げたグラスを 軽く合わせる

それは 涼しげな音色を奏(かな)でた……

それが ささやかなパーティーの始まりの合図

ワタシは グラスを空け
室内(あたり)を見回す……

ギルメン達は 思い思いに酒を呑み 話し
食事を始めていた……



……いいものだな

共に戦う仲間たちと
モンスターに勝利し
酒を呑み
テーブルを囲む………

…………!

…そう…か…

……こ…んな……

………部…屋………

………を

ワタ…シ…は………

………

………………

……………………

ん……ぅ…ん……

……ぅ…うぅん!?

身体を揺さぶられている事に ワタシは気がついた

目を開くと 御者台(ぎょしゃだい)に居たはずのアラビーヌが
ワタシを揺(ゆ)さぶっているのが見えた……



「キミ! キミ!

大丈夫?」


荷台に横たわるワタシを
心配げに パートナーが
覗(のぞ)きこんでいる…



「……あっ?

……あぁ……

そうか……

共和国(マーロ)に
到着(つ)いたんだな……」



少し ぼんやりする頭で
考える
……到着(つ)いたら起こしてもらうよう 頼んでいたな

そういえば………


ワタシは アラビーヌに
礼を言うと パートナーと共に
牛車を降りた

ワタシ達が降りるのを
見届けると
アラビーヌは 御者台に戻り 次の客が来るのを待つ……



……………


草地に降りた ワタシは 周囲(あたり)を見回す……

濃い紺色の空に 白い入道雲が力強く立ち上(のぼ)り
強い日射しが 足下(あしもとに)に 深く 広く 茂(しげ)った草に
照りつけ 暑い空気が立ち上る……

少し離れたところに
まだ動く水車が回り 冷たい水を 汲(く)み上げ 眼と身体に
凉(りょう)を与えてくれる……


遠浅(とおあさ)の砂浜にはアクアマリン色の海が満ち
寄せては返す波が
白い砂を洗い 心地よい波音を奏(かな)で
吹きわたる風が涼(すず)しさを運ぶ……


“実り多き半島″……

そこは マーロ共和国の入り口に位置し 牛車乗り場の始発所……

何処(どこ)までも明るく
広々とした この景色
ワタシは好きなのだ………


ドレッサーから出した 共和国(マーロ)服に着替え ワタシ逹は波打ち際を歩(ある)く

暑い日差しのなか
足元(あしもと)に打ち寄せる波が冷たくて心地よい



「見て キミ!

これ!!」



パートナーの 紫色に染めた共和国の白い袖口から覗(のぞ)く ちいさな手に
サンゴのかけらが光っている


「こちらには ヤドカリの殻が あった………」



ワタシも赤い共和国(マーロ)服姿(すがた)で採取する



「きれいだね」



「あぁ…そうだな……」



ふと見上げた

ワタシの暗緑色(ダークグリーン)の瞳が

遠くの深く青い海に吸い寄せられる

………!!


海の青さと 雲の白さが交わる
遠く遠い水平線……

そこを航行(ゆ)く
1艘(いっそう)の船を
ワタシは見た気がした


……………………………



「どうしたの?キミ…

何か悲しいことでも あったの?」



「えっ? なにが……」



「泣いてるよ…

キミ…」



「!!………」



パートナーに指摘(してき)され
ワタシは 頬(ほお)に涙が 伝(つた)っていることに気がついた……



「…………………………

……なんだろう……

…悲しいような……

懐(なつ)かしいような…

………切(せつ)ない

この気持ちは……」



心地よさと喪失(そうしつ)感が いりまじったような……

胸の奥にワタシは
にぶい痛みを感じていた…


「う〜〜ん

なんだろう?

わたしには わからないな

…………………………

キミが 何か つよく ココロに

感じたんじゃないかな………」



「……強く 心に感じた…こと………か」



「寝てるときに 見ていた夢…とか?」



「……夢………か

覚えてないな……」



「そっか……

……………………

かえろうか?

わたしたちのへやに…」



「……そうだな

わたしたちのへや……

部屋………

………!

そうだ 部屋!!

あの建物の内装を…
味気(あじけ)ない 石造りの壁を 変えよう

色は……

そうだな
赤と白のブロック………

アクセントに
ステンドグラス・ブロックも置いて………

それから………」



「ふふっ

そうだね ひといき ついたら

ハウジングの続き しようか?」




「そうだな……そうしよう………

あの作りかけの屋敷は
喫茶店風に……

少しずつ改築して……

憩(いこ)える場所に……

できるだろうか?

……ワタシに」



「できるよ わたしたち ふたりなら

きっと!」



「……そうだな ワタシ達 二人なら…」



白い砂浜を後(あと)に
ワタシ達は マーロ共和国内にある ワタシ達の屋敷を目指し
アクアマリン色の海に架(か)かる質素な木板の桟橋(さんばし)を渡る……

その足が軽いことを ワタシは感じていた

あれこれ 悩んでいた家屋改築(ハウジング)に目処(めど)が ついたのだ


方向性が決まれば ハウジングを進める事ができる…
迷ったら 出かける事
そこから
何か得るモノもある……

そんなことを ワタシは感じていた…………




ある冒険者のひとりごと……30・5ヤーレン騒乱文化祭より〜絵画〜から…牛車内での夢(別案)〜終わり〜