………………………



満天の星空の下(もと)
時(とき)おり吹く風が
サクラの枝を揺(ゆ)らし
通りすぎていきます

星明かりを受けた花が
暗がりの中(なか)
そこだけ 淡(あわ)いピンクの灯(ともしび)が浮かびあがります


その花(ともしび)の下(した)
ベルにゃん と ももか は
青い火鉢(ヒバチ)を囲(かこ)んで 湯呑(ゆの)み に注(そそ)がれた お茶を 喫茶(いただい)ていました

互(たが)いに 黄色とピンクの浴衣(ユカタ)を着ています
ユカタの図柄(ずがら)は
ベルにゃん がキツネ面
ももか がアサガオでした………



「ベルにゃん

魔王国(クリシュナ)って
知ってる? (´-ω-`) 」



「……にゃ?

魔物の女王が治(おさ)める
魔物だけの小さな国にゃ……

それが どうかしたのかにゃ?」



「ももか ね 魔王国(そこ)に行かなきゃならないの

どんなとこかな〜って

( ̄0 ̄;) 」



「………………

三国国境を抜けると
大きな湖が あるにゃ…

さらに先(さき)に進むと
イタッチという魔物の門番が守る扉のさきに
草木の少ない山中に造成(つく)られた街と城があるのにゃ……

土地は貧しく 太陽(ひ)も あまり差さない……

……………………

……強い魔物が正しいとされる……

……つまらない国(とこ)にゃ…」



丈夫な木の枝に刺したチカアユが 火鉢(ヒバチ)の中(なか)で 炭からの熱を受け続(つづ)け
美味しそうな香(かお)りをあげ始めました



「ベルにゃん 詳(くわ)しいね

( ̄∇ ̄*) 」



「……………

……ワタシの故郷にゃ……

…………

………………

……それから 魔物の湖の近くには
風の谷という
深(ふか)い 深い 谷が あるのにゃ

そこは谷底から 常時(つね)に強い風が吹き上がっているにゃ………

谷底の奥には
風の精霊の住む聖域?が あるのにゃ……

そこから つよい風が吹いてくると言われているのにゃ……」



「ふむ ふむ 風の精霊か〜
ももか も会ってみたい
(^∇^)/

ベルにゃん 会ったことある? ( ̄ο ̄)丿? 」



「あくまで 言い伝えにゃ

ワタシは 会ったことは無いにゃ………

もし 存在す(い)るのにゃら 観察(み)てみたいにゃ………

……………

………………

……………………

ももか……

焼(や)けたにゃ……」



火鉢(ヒバチ)の中で炙(あぶ)られた チカアユを枝(えだ)ごと ベルにゃん は ももか に 差し出します



「ベルにゃん?

ももか これから戦うの?
( ; ゜Д゜))) 」



チカアユの塩焼きは
錬金術合成で作ることが出来ました
戦闘前に食べると 魔法防御が 1.05倍になるのです……



「にゃ?

…………………!

ち 違(ちが)うにゃ!

これは 調理した チカアユの塩焼きにゃ……

食べても 魔法防御の効果は得られにゃいにゃ……

酒の肴(さかな)に焼いたのにゃ」



「な〜んだ びっくりした

(@ ̄□ ̄@;)!!


ベルにゃん の おさかな〜
( ̄▽ ̄)/

うん

おいしい〜〜

あっ そうだ!

ベルにゃん もチーズ食べる? \( ̄▽ ̄;) 」



ももか は ひとくちチカアユを食べると
カバンの中から
チーズを取りだしました

魔物が たまに落とす錬金術合成用素材です
キノコとパンと組み合わせると クロックムッシュ に合成出来ます……



「にゃ?

…………………

たしか… 塔の外か 枯れはてし炭坑(枯れ炭)で たまに手に入るアイテム(モノ)にゃ……

いいのかにゃ?」



「ん〜 いいよ〜

ベルにゃん からは
もらって ばっかりだし

( ̄▽ ̄;)/ 」



「ありがとにゃ


チーズ(これ)も 肴(さかな)に 一杯(いっぱい)呑(の)むにゃ……」



カバンの中から 透明(とうめい)な瓶(ビン)と 小さく透明な盃(さかづき)を ベルにゃん は取りだしました

透明な瓶(ビン)には 薄いオリーブ色をした液体が満たされいるのが見えます



「ベルにゃん それは?
(・◇・?) 」



「これは 聖牛の草(ジュブルフカ)……と呼ばれる 魔物のお酒にゃ……」



「……ズブロッカ?
( ̄〜 ̄;)? 」



「ももか にも そう聞こえるのかにゃ?」



「ちがうの?
(・◇・?)

ももか には そう聞こえたよ ( ̄O ̄)/ 」



魔物の言葉は ひとに正しく伝わらないときが あるようです………



「…………まっ いいにゃ

にゃ♪ 」



ベルにゃん がビンを傾(かたむ)けると

小さく透明な盃(サカヅキ)が
薄いオリーブ色に染(そ)まっていきました………


「 Σ( ̄□ ̄;)!?」



ちいさな盃(サカヅキ)から 不思議な香りが 拡散し(ひろがっ)てゆきました……



「これは サクラの?
( ̄〜 ̄;)

それとも 柏(カシワ)の葉?

にてるけど ちょっとちがう (・_・?) 」



「にゃ……

この香りは 瓶(ビン)の中に
入っている 草の香りにゃ」


「ん〜〜?
( -_・)?

……………………

お〜! なかに何か入ってる! Σ( ̄□ ̄;)」



細い草の茎(くき)が1本
オリーブ色の海に沈んでいるのが 透明なガラス越(ご)しに見てとれました………



「これが 透明な蒸留酒(ウォトカ)に 色と香りを
与えているのにゃ……」



「ウォッカ? に 色? 香り? ( ̄〜 ̄;) ?

ももか よく わかんない
( ̄ロ ̄;) 」



「色と香りの付いた 強い酒にゃ……」



ベルにゃん は盃(サカヅキ)を空(あ)けると チカアユの塩焼きに かぶり付きました



「にゃ♪

サクラを見ながらの一杯は 格別にゃ♪」



「ベルにゃん ベルにゃん
ももか も それ のんでみたい
( ̄¬ ̄;) 」



「にゃ?

これは 強い酒にゃ……

ももか には…………

………………

……………………

割っ(うすめ)て みるかにゃ?………」



「 (;゜∇゜)

ベルにゃん どうするの?」


「………グラスの中に 絞(しぼ)った南国の果物汁(ジュース)を入れるにゃ


それから ジュブルフカを少(すこ)し注(そそ)ぐにゃ………」



足の付いた透明なガラスのコップ(ピルスナー)に
橙(オレンジ)色が満たされていきます…………



「ふむ ふむ ( ̄□ ̄;) 」



「……それから マドラーで 軽く混(ま)ぜると 出来上がりにゃ♪」



橙(オレンジ)色で満たされた足付きグラス(ピルスナー)から
あの不思議な香りが 拡散(し(ひろがっ)てきます………



「ももか……

お待たせにゃ……」



黄色地のユカタの
ベルにゃん の褐色の手から
オレンジ色の お酒が入った足付きグラスが
ピンク地のユカタの
ももか の白い手に
そっと渡(わた)されました………



「ありがと〜 (´ψψ`)

ふしぎな香り〜」



ももか は グラスからの香りを確かめると
ひとくち飲んでみました



「どう かにゃ?」



「うん おいしい〜
O(≧∇≦)O 」



「それは よかったにゃ……
ももか のくれたチーズも
おいしいにゃ♪」



「うん おいしいよね
( ̄∇ ̄) 」



ベルにゃん と ももか は
チーズを かじりながら
グラスを空けていきます……………



……………



「ベルにゃん は ろうして
そんなに つよいのぉ〜〜?

(〃ω〃)ノシ 」



「にゃ?

お酒のことかにゃ?」



酔いが まわってきたのか
ももか の白い肌が ほんのりサクラ色に染まり 呂律(ろれつ)も回(まわ)らなくなりつつありました………



「それも らけど

剣も まほうも つよ〜い よね〜〜
( 〃▽〃)/ 」



「…………

ワタシより 強い冒険者(ヒト)は たくさん いるにゃ

自分たちの身を守り
未知(道)を 先に進むため
少しばかり強くなっただけにゃ………」



「みち? (〃-◇-?)

………………

ももか 魔王国(クリシュナ)に 行かなきゃ なりゃない の (〃ω〃)

そこれぇ〜

石化を解く魔法を もらっれ帰るの〜〜

たのまれらんだよ〜

ナギしゃんに〜〜〜

O(≧∇≦)O 」



「……………

石化魔法も その解除方も 国家機密にゃ……

まして 人間に教えるなんて ありえにゃいにゃ……




「うん……

魔王国(クリシュナ)の門番も そう言ってら〜

(〃 ̄▽ ̄;)

らから 共和国(マーロ)に
来たんらよ〜〜

そしらら ベルにゃん に
会えら〜〜

(σ≧▽≦)σ 」



「ももかは 難(むずか)しい依頼(クエスト)を受けたんだにゃ………

普通の冒険者では 達成(クリア)はできないようにゃ……

…………………

…………断(こと)わったほうが良かったんにゃ?」



「そう らったかも (;>_<;)


れもね 魔王国(クリシュナ)に ナギさんが行こうとしてらの


国境沿い の シノビーヌ
も たおせないようれは
ダメら って
紳士オーク(ジェントルマン) に言われて〜

ももか らちが代わりに
たおして〜〜

ももか らちが 魔王国(クリシュナ)に 行くことに
なっらの〜〜 (〃ω〃) 」



「ナギも無茶な事をするにゃ……

公国(シュリンガー)メイド隊のリーダーとは いえ
今は 公国の国王代行にゃのに………」



ベルにゃん は盃(さかずき)をいっきに空け 手酌(てじゃく)で盃を満たします




「ベルにゃん……

ももか ね いま七曜術士なんら〜

魔法 つよいよね

こう

リングオブサターン!!」



ももか は ふらふらと立ち上がると 両手を広げ

魔法の発動ポーズを取ろうとしました



「あぶにゃい!!」



バランスを崩(くず)し 後ろに倒れそうになった
ももか を 脱兎(だっと)の如(ごと)く 飛び出した
ベルにゃん が 抱きとめますが ベルにゃん を下に
ふたりは しりもちをついてしまいます



「ももか!

大丈夫(だいじょうぶ)かにゃ?」



「あはは O(≧∇≦)O

ベルにゃん すご〜い」



「怪我(けが)が なくて良かったにゃ………」



ベルにゃん が立ち上がろうとすると ももか が
その袖(そで)を掴(つか)み
それを制(せい)しました………



「ベルにゃん

このままで いて………」



「…………

わかったにゃ………」



座ったまま ベルにゃん は
ももか を 抱きしめます………



“モギュ………″



「ベルにゃん………

………… (´ψψ`) 」



「………こうすると
落ち着くにゃ?」



「うん…

…………………

……ももか どうしたら
つよくなれるかな………」


「……………………

方法(やりかた)は 色々あるにゃ……

スキルLv(レベル)を対応するオーブを使って最大値にするにゃ……

それから 武器を限界突破させて
対応する強化剣を使って最高Lvにするにゃ……」


「ふむ ふむ……
( ̄〜 ̄;) 」


「あとは……
一次職 二次職 全職業を制覇(カンスト)する事にゃ……
それから 相手の属性に
対して……」


「……ももか 眠くなって……… (´д⊂)‥ 」



「ももか?」



「(-.-)Zzz・・・・」



ベルにゃん の話を聞きながら 安心したのか
ももか は眠りに落ちていました



「ももか……

かわいい眠り姫にゃ……

姫……寝台(ベッド)まで お連れしますにゃ……」



ももか を起こさないように 抱き抱えると ベルにゃん は二階の寝室(ベッドルーム)へ向かいました………

……………

…………………

………………………

高い梁(はり)から吊りさがったシャンデリア
そこに差し込まれた夜光石(やこうせき)

その明かりも 今は消え
寝室を照(て)らすのは窓からの星明かりだけでした………



「ももか……
到着(つ)いたにゃ……」



ベルにゃん は すもも の眠る隣(となり)のベッドに
静かに ももか を横たえました…………



「おやすみ ももか……

よい夢の訪(おとず)れんことを………」



目を閉じた ももか の白い額(ひたい)に軽く口づけをして ベルにゃんは パートナー(さな)の眠る自分たちのベッドに向かいました



「朝には ティ……
いや ナナ(ニャニャ) が朝食の支度(したく)に来るにゃ……

朝食が終われば
ももか とは
しばしの別れにゃ

依頼(クエスト)
早く 終わるといいにゃ………」つい ベルにゃん の口から独り言(ひとりごと)が
漏(も)れました



「…………んっ

ベルにゃん?

…………………」



パートナーの さな の
寝言(ねごと)が聞こえて
きました



「さな(さにゃ)……

ワタシは ここにゃ……」



さな と同じベッドに入ると ベルにゃん は
そっと パートナーを抱きしめます……



「んっ……ベルにゃん……

ずっと……いっしょ
………だよ」



「さな(さにゃ)とは

ずっと 一緒にゃ……」



「………ぅん♪」



そのまま ベルにゃん も
深い眠りに 落ちていきました…………



よく朝 4人は
メイドの ナナと
朝食を済ませ

ももか と すもも を
水路と石橋まで
見送りました…………



この後(のち) 4人が再(ふたた)び会うのは
2年の歳月(さいげつ)が必要に なるのです……………



魔物のベルにゃん そのいち… お正月 〜おわり〜