トクメーの勤務地はなんだかんだ言ってレストラン。
レストランのグッズなんか、キッチン用品とさして変わらんだろうと思う人も居るかもしれないですけど、…まぁ確かにそれもそうなんですが。
キッチン用品よりも、どいつもこいつも1,5倍ぐらい重たい。
中でもコンロ系のパーツの重さはぴかイチ。
プラックっていう料理人が好んで使うコンロタイプがあるんですが…。なんていうかなあれは…。えーっとIHのフルフラットタイプを想像してもらって、それのガラストップ部分が厚さ2cmぐらいの鉄板になり、埋め込みヒーター部分に埋め込みガスコンロが入って、でも開放してるんじゃなくてその上にちゃんと鉄板を二になるようにはめ込んで、ぱっと見IHみたいに円が書いてある風に見える。そういう大型の設備っす。
これの利点は分厚い鉄板にため込まれた熱量でコンロ真上以外のすべての部分でも熱を持ち、中火弱火を管理することが可能、という点。熱源から離れると弱火。近づくと強火。
これにより数多くのソース類を管理しながら営業を回せるわけですわ。
その隣には直火調理もできるように、ごつくてでかい一口コンロがノンステップである。
過酷な加熱の環境に耐えれるよう、鉄板はあくまでも分厚い。どこまでも分厚い。そうじゃないと毎日つけっぱなしの火に負けて、燃えてなくなるんですよね鉄が。そうでなくても長期にわたり使用されたコンロは変性して酸化、先端からマグマ固まったみたいないびつな形になりながら崩壊するんですよね…。
「先輩!」
「なにー。」
「プラックの掃除してください!!!」
「貴様またか!!!」
何でこんなつらつら語ってるのかって、このプラックは毎日営業終了後、清掃するんですけど、この清掃を請け負うことがなんでか知らんけど多い。…まぁわかる。だってトクメーが大体一番に仕事終わるもんね。時間管理は菓子屋の十八番。元々の仕事量もあるけど。
となると、手が空いたトクメーは目につく片づけから始めるわけですわ。それを終わらせてもまだ他の人が終わってない場合、高い確率でプラック掃除が回ってくる。
「私その掃除嫌いなんだよ!! 君らが汚してんだから君らでやって!!!」
「またまたそんなこと言って! 毎回来たらやってくれてんじゃないですか!」
「君らの仕事が終わってないからなッ!! それぐらいしかやることが残ってねーんだよ!」
「いよっ! プラックの女王!」
「貼り倒すぞテメー。」
「センパーイ、がんばって!」
「…しゃーねーなぁ!! オイコラ、メイン側のは掃除終わってんだろうな?!」
「あ、こっち側のプラックも掃除したかったです?」
「先輩も好きですねー!」
「効率の問題だってんだよぉ!!!! やるときは一気にやるわ!」
何でこのプラック掃除が嫌いって、…重いし痛いし熱いんですよ…!!
まず使い終わりのプラックって、すぐに冷えるもんじゃないんですよね。そりゃそうだ。保温性バッチリだもん。しばらくって、一時間ぐらいたたないと水を垂らしても沸騰して瞬時に消し飛ぶ。つまり洗剤垂らしてもその場で固まって掃除どころじゃない。掃除のときはとにかく水をかけながら様子見をしつつゆっっっくり冷ます。そうじゃないとプラックが破損するし。
そんで前述のとおり、プラックもコンロ回りも、パーツの一つ一つがくそ重たい。重いから持ちにくいのにその上熱い。
最後。使う洗剤が店の中の洗剤で一番きつい!!!!
「くそー、うおおおお、あつい! おもい!!」
「がんばってー。」
「たにんごとにしやがって…!」
「いやぁ。先輩来るとマジで早く終わるなぁ!!」
「仕事だからなッ! ちゃんとやるわい!!」
「ひゅー、せんぱいかっこいー。」
「へいへい!!」
油汚れ専用の超強力な洗剤って、皮膚についた時点で肌が荒れるとか以前にひりひりするんですよね!! 吸えば咳込み、煙だけでも目がやられ、飛び散ってそれが触れるとひりひりする。ちなみに目に入った場合、すぐに洗い出さないと冗談抜きで失明します。
そんな劇薬片手に挑むんで、手にはゴム手袋必須なんです。
暑いし、持つものは熱い上にゴム手をしてるので汗びっしょりになりながらひたすら油汚れの鉄板を外せる部分は外して、外せない部分は水をかけて、洗剤と専用のスポンジ持って磨いて磨いて磨いて…、っていうのがプラック掃除の全貌っす。慣れてると十五分程度で終わりますけどくそ暑い。でも毎日必ずやるやつで、一番最後に回される掃除だから必然的に遭遇する率が高い。
でもしかし。私は言いたいことがある。
「そもそも論として、さ!」
「はい。」
「このプラック君らしか使ってないから私ほぼ無関係じゃん?!」
「そーっすね?」
「先輩は今日はずーーとお菓子作ってましたもんねー。」
「そうだよ! じゃぁもう使った奴が掃除してくれよ!!」
「「えーーーーー。」」
「えー、じゃねぇわ。」
「今忙しいですもん。」
「そうだそうだー。」
「作ったやつの小分け真空パックの作業ぐらいなら代わってやるよ…!!!!」
「あ、じゃぁあとでお願いしますね!」
「僕らこっちの冷蔵庫の掃除しますから!!」
「そうだお前らなんだかんだでほかの仕事が山のように出てくるポジションだよな…。」
というわけで今回も多分次回も、出勤する以上プラックの掃除に精を出すわけですわ。
あーーー、めんどくせーーー。