河骨
○河骨や月も崩れて闇の貌
○河骨やしづかに沈む雨の中
烏瓜
○煩いを星にとどめて烏瓜
烏瓜
○漆黒の闇へとつづく烏瓜
◯乗車して夜空の星や烏瓜
◯乗車して星や瞬く烏瓜
◯少年の心の星や烏瓜
烏瓜
○秋入学銀河鉄道澄みわたる
○新しく期待のこもる烏瓜
曼珠沙華
○空のたま包み込みたる曼珠沙華
○曼珠沙華孤独といへど二三本
曼珠沙華
○ゆるやかに降りささりけり曼珠沙華
○曼珠沙華空より落ちて火のごとく
○曼珠沙華あふれて天の道となる
○曼珠沙華言いたいだけの子供かな
曼珠沙華
◯彼岸花化けて狐の道となり
◯天上の塊落ちる曼珠沙華
◯かたまりの心の内よ曼珠沙華
◯天上にとどけとばかり曼珠沙華
◯それぞれのさぐる心や曼珠沙華
◯曼珠沙華錆のごとくに浮き上がる
曼珠沙華
○曼珠沙華夢に太古の秘薬かな
○曼珠沙華本姓の君うまれたる
○曼珠沙華憎まれ口もなかりけり
曼珠沙華
○ゆるやかに降りささりけり曼珠沙華
○曼珠沙華空より落ちて火のごとく
○曼珠沙華あふれて天の道となる
○曼珠沙華言いたいだけの子供かな
桐の花
桐
○あこぎなる男や捨てて桐の花
○多様なる恋もあるまし桐の花
○年下の風に装う桐の花
○働いて会うためだけの桐の花
○働いて会うこと見ゆる桐の花
○働いて会うこともあり桐の花
◯桐の花まといて船の流れゆく
◯桐の花まといて少女通学す
◯通学の少女や桐の花の中
◯田舎路の電車の窓に桐の花
鶏頭
○鶏冠や雄壮にしてはかなけり
○終わりゆく大人の女性や鶏頭花
○鶏頭や正しき道の野をかける
○鶏頭や正しき道を我に問ふ
鶏頭
◯鶏頭や言葉もいらぬ名もいらぬ
◯鶏頭の深みにかかるあしたかな
◯鶏頭や悲しき人を呼びとめる
◯鶏頭や幼き子等の前に立つ
◯鶏頭や宿知られざる夫人の陽
○鶏頭や星座に飽きず立にけり
○鶏頭や星座に飽きず未婚なり
◯鶏頭のあらはれて浮くむかしかな
○鶏頭や切られてわれを解き放つ
◯さびしさに鶏頭の花清められ
◯庭先の鶏頭空に清められ
◯留守先の恋する色や鶏頭花
◯さびしさや清めて庭の鶏頭花
◯庭先に青空高く鶏頭花
◯庭先に掃かれそびえる鶏頭花
鶏頭
○鶏頭や星座に飽きず立にけり
○鶏頭や星座に飽きず未婚なり
◯鶏頭のあらはれて浮くむかしかな
◯鶏頭や言葉もいらぬ名もいらぬ
◯鶏頭の深みにかかるあしたかな
◯鶏頭や悲しき人を呼びとめる
◯鶏頭や幼き子等の前に立つ
◯鶏頭や宿知られざる夫人の陽
鶏頭
○鶏頭ややわらかき肌世の光
○鶏頭や逆光となり次次に
○鶏頭や青春の砂落ちにけり
蒲公英
○吹く先に黄色いたんぽぽ咲いてをり
○蒲公英や女子学生のふくらみぬ
○蒲公英や珍味すこぶる昭和基地
蒲公英
○蒲公英をさとして白き綿毛かな
○たんぽぽの絮につまんだ娘かな
○蒲公英やながれて雲はところどころ
○蒲公英や告げて新し恋人あり
○蒲公英やおやつの時間チャイム鳴り
○たんぽぽと隣の人や帰りけり
○蒲公英に農民たちの暮しかな
○蒲公英や若い娘の指先に