木蓮

◯白木蓮めくれて空は四月頃

木蓮

○木蓮や胸にひろがる白き泡
○木蓮や女子学生の膝頭
○木蓮や今でも声をわすれまじ
○木蓮や教室の嘘いつまでも
○永遠になにも要らない白木蓮
○スカートの短きて濃き白木蓮
○木蓮やハサミの夢はおなじ色


木蓮

○若枝の白木蓮や黄光

○木蓮や午後の窓辺のものごころ
○木蓮の一弁ほぐし日あるのみ
○木蓮の館の脇を通りけり
○木蓮や一弁落ちてほぐれたる
○木蓮の七つの朝の盛りかな
○紫木蓮落つともすれば乱れたる
○時として木蓮の空ほぐれたる
○木蓮や一弁落とし世を憂ふ
○木蓮や空にほぐれて解けにけり
○白木蓮ことばを知りて蒼空ゆく
○紫木蓮いま建築の差す光


辛夷

○新しき期待のこもる辛夷かな
○君見ゆる坂より少し辛夷かな
○新調の陶器を飾る辛夷かな

辛夷

○一天に触手をのばす辛夷かな
○三角の山より高き辛夷かな
○一本の辛夷の道を帰りけり
○辛夷咲く他に名のなき熊野川
○やまあららぎ山の青さをつかみをり

セロリ

○年上の女性のごときセロリかな
○朝礼に嫌いな女セロリの癖
○体型やからだは質よセロリの癖
○左右なる乳房のかたちセロリ噛む
○ローラーを顔に当てたりセロリ噛む
○通いけるエステに愚痴をセロリの癖
○あの男逃すものかとセロリの癖
○忘れたき男の理由セロリ噛む

薔薇

○白薔薇詩集のごとくわれを噛む

薔薇

○なつかしや思いの外に薔薇香る
○アーチ編む君あこがれて薔薇香る
○生垣や憧れ秘めて薔薇香る
○その蕾一輪として薔薇香る
○その蕾心もとなく薔薇香る
○其の蕾新作説も薔薇香る

薔薇

○暁や空おし上げて薔薇の花
○すこし不安すこし希望や薔薇の花
○短めの髪よろけてや赤き薔薇
○ちつぽけな痛む未来や薔薇の花
○心臓や棘のひらいて薔薇の花
○抱きしめて薔薇に指輪の邪魔をせり
○情熱や紙の薄さを赤い薔薇
○髪長き胸の奥ほど赤き薔薇

薔薇

○なつかしや思いの外に薔薇香る
○アーチ編む君あこがれて薔薇香る
○生垣や憧れ秘めて薔薇香る
○その蕾一輪として薔薇香る
○その蕾心もとなく薔薇香る
○其の蕾新作説も薔薇香る

冬薔薇

○冬薔薇や通り抜けたるカフェパリイ
○大人びて紅よく見ゆる寒薔薇
○冬薔薇の休みて肘や午後の夢
○高垣に面見せたり冬薔薇

冬薔薇

○空おもく誰を待つなり冬薔薇
○おもたさの色も濃くなり冬薔薇
○待つ人や色の濃くなり冬薔薇
○虚ろなる君の隣や冬薔薇
○空ろなる君を乗せたる冬薔薇
○小大君契る心に冬薔薇
○曼荼羅の具現ごとくに冬薔薇
○白眉なる静や捉えて冬薔薇
○臨終や雨にそろはぬ冬薔薇
○木の肌の黒の眸に冬薔薇

冬薔薇

○冬薔薇や猫いぬ庭に咲いた花
○首の長くさも美しき冬薔薇
○冬薔薇や垣に顔出す人の声


ポインセチア

○ポインセチアに包まれ都市の夜に歩く
○街中やポインセチアの家族連れ
○ポインセチアひとり人気のレストラン
○ポインセチアしづかに回転木馬かな
○キャンドルにポインセチアの小窓かな
○発光しポインセチアの華やげる
○装飾しポインセチアの華やげる
○装飾し悲しげなりやポインセチア
○責任の彩りポインセチアあり
○装飾しポインセチアや夜の雨
○誰も居ぬポインセチアの飾りかな
○誰も居ぬポインセチアや好きなとき
○飾り終えポインセチアや一人待
○街暮れてポインセチアと運河かな
○焼菓子にポインセチアの飾りかな
○焼菓子にお伽のポインセチアかな
○チョコケーキお伽のポインセチアかな
○天窓にポインセチアの光かな
○誰も居ぬポインセチアの飾りかな
○クリームやポインセチアに皿の上
○誰も居ぬポインセチアの飾りかな
○手を繋ぎポインセチアや夜の街
○残されしレースにポインセチアかな
○吊るされて白にポインセチアかな
○くちびるのクリームポインセチアあり