「危ない!」
鋭い声が俺の耳を刺した。危ない、なんて言ったところで今更どうしようもないが、口は勝手に声を送り出していた。
俺の目の前には小さな女の子。そしてその子に向かって物凄い勢いで飛んでくるボール。
直撃必至コース!にいた女の子に思わず手を伸ばしていた俺の直前で彼女の姿が消えた。
「…え?」
次の瞬間、俺の頭部と腹に物凄い衝撃が走る。
頭部には勢いよくボールが当たり、腹には何もない所でなぜだかつまづいた女の子の頭突きがクリーンヒットしていた。
「ぐはっ。」
腹の衝撃により、空気が半強制的に口から押し出される。そして頭部の衝撃により、バランスが崩れて、俺には女の子の頭を腹に抱えたまま後ろに倒れる以外の道が残されていない。
えらくゆっくりと世界が動いていたような気がした。倒れながらも俺はなんとか女の子の頭に腕をまわし、抱え込む。頭と背骨と腰骨と尻とその他もろもろに激痛が走った。
「…いてぇ。」
今の一瞬だけで体が千切れるくらい痛い。無意識に声が出せるってことは痛みのわりに損傷はそこまでひどくないらしい。
「…ふぇ?痛くない?」
不意にそんな声が腹の上から聞こえてきた。あまりの衝撃に忘れていたが、俺は女の子に頭突きされたんだった。まだ、腹の上に女の子の頭が乗ってる感覚がある。
「あの…重いんだけど。」
つい、声が険悪になる。俺の声で目を開けたらしい女の子はようやく状況を理解して、ジタバタと俺の腕の中で動いた。特に解放してあげない理由もないので、抵抗はせず、自力で俺の腕の下から這い出すまで待つ。
「…あの、ごめんなさい。」
いまだに倒れたままの俺の両足の間にちょこんと座り、女の子は申し訳なさそうに言った。さっきの険悪声で怖がらせてしまったかもしれない。
「…お前、怪我ないか?」
痛みがなかなか引かないから倒れたまま聞く。
「はい。私は大丈夫ですぅ…。」
そう言って女の子は少し笑った。…可愛い笑顔だった。
思えば、俺はあのときから恋に落ちていたのだ。
あのあと、彼女の着ている服が自分の高校の制服だと気づいた。彼女が実は高校生で、しかも自分より年上だと知り、かなり驚愕したが、彼女を好きな気持ちは急速に膨らんで、なんとしてもそばにいたいと思ってしまっていたから、喜びの方が大きかった。
これが、俺、有沢ヒロとロリっ子な先輩にして俺の最愛の人、城井アリスとの出会いだった。
そして、俺は今も彼女に恋をしている。誰よりも可愛い、俺の女神に。
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久しぶりのSSです。一周してアリーくんが語ってます。
いやー、この二人こんな甘酸っぱい…というより甘じょっぱい出会いをしていたんですねぇ。あ、しょっぱいのはアリーくんの血と涙ですよ?(ぇ
アリスちゃんはドジっこでよく何にもない所で転んでしまうのですが、類い希な幸運により、たいてい無傷で助かります。そして、とばっちりを受けるのは毎回アリーくんの仕事(笑)
あれ?なんかアリーくんすげぇかわいそう←
それにしても、このキャラたちは書きやすいです。なにせ、勝手に動き出す(笑)一番動かないアリーくんですら、なんとかなっちゃうから不思議です。
さて、長くなりましたが、ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
これからも良い話が書けるように精進致しますので、よろしければまた読んでやってください!