クリスマスが間近にせまるある日、一本の電話があった。
「もしもーし。ラギくんですかぁ?」
電話の相手は友達の城井アリスちゃんだった。少し舌っ足らずな喋り方をする可愛らしい女の子だ。
「うん。そうだよ。僕に電話なんて珍しいね、アリスちゃん。」
そう言いながらソファに座る。点けっぱなしのテレビがうるさかったので、リモコンを探しているとアリスちゃんが話し始めた。
「ラギくんに、お願いがあるんですぅ。」
どうやらマフラーを作りたいらしい。作るより買った方が早いし綺麗なのに、と思ったところで気が付いた。
「誰かにプレゼントかな?」
“誰か”が誰だかはわかっていたけど、言ったらアリスちゃんを慌てさせちゃうからぼかしておく。
「えっとぉ…。お、おにーちゃんに、ですぅ。」
それでも少しは慌てたみたいでアリスちゃんは苦しい言い訳をしてくる。
「お兄さん、いたんだ?」
くすりと笑って聞いてみる。本当にいるのかどうかは知らないけど、プレゼントする相手ではないだろう。
「はい!クリスマスが誕生日なんですぅ。」
それは…なんというかちょっと可哀想だな。喜びは1.5倍、プレゼントは半分、みたいな。
そんな事を思いながらようやく見つけたリモコンをテレビに向けて、スイッチを押す。
「そっか。じゃあ頑張って作らなきゃね。」
そう言ってにっこりする僕。電話だから見えないけど。
「はい!…あのぅ、それでぇ、ですねぇ。」
何か恥ずかしそうにモゴモゴしているアリスちゃん。まぁ、僕に用事ってことは多分そうじゃないかと思ってたし。
「作り方、知りたいんだろ?」
やんわり聞いてみると、アリスちゃんはちっちゃい声ではい、と言った。
「良いよ。教えてあげる。」
そんなわけでアリスちゃんに編み物の手ほどきをした。彼女は手先が器用な方らしくすぐに上手に編めるようになった。
そうこうしている内にクリスマスまであと3日ほどになった時、また一本の電話があった。
「桂木、聞きたい事がある。」
電話の相手は友達でありアリスちゃんの想い人でもある有沢ヒロくんだった。
「ヒロくんからかけてくるなんて珍しいね。どうしたの?」
その日は丁度、アリスちゃんのマフラーが編み上がった日で、僕はちょっとした達成感を味わいながらベットに寝転んでいた。
「女の子は何を貰ったら嬉しいものなんだ?」
…ヒロくん。男の僕に聞いても仕方ないだろう。というツッコミを心の中で入れる。
「うーん。何でも良いと思うけど。心がこもってたら何を貰っても嬉しいものだよ。」
ヒロくんがくれるなら何でも嬉しいだろうし。
「そうか。…桂木、サンキュな。」
「いえいえ。どういたしまして。」
大したアドバイスしてないけど。
まぁ、二人のクリスマスがハッピーになることは間違いないみたいだな。
************************
さて、SSですね。なんかもうシリーズのようになってきました。
つか、SS書く度に長くなってるような…。
あ、えっとキャラ設定作りました。
とりあえず名前だけ。
有沢ヒロ
城井アリス
深雪レン
桂木ケイ
詳細はまた明日書きます。