大石くんまじでか自由律

○まあるい月がはじまる
○濡れた橋を歩いている
○島の灯火に腰を下ろす犬がいってしまった
○好きという前の悪口と好きというまえの一日
○好きという前の悪口と過ぎた時刻表
○寺の前の朝陽に虫が歩き出した
○若葉に埋もれていた月明かりの夜になに咲く
○町すぎて大河赤黒き自分ついてくる
○豚がたくさん金屏風を直す人に合った
○ふるさとの雪あたたかい
○錆びた鈴帽子をかぶる
○豚と牛がたくさんの音楽学校幹をなでる猿が見ている
○海老の殻が美しい陽が落ちる
○カフェにあかつき穴を埋める
○ねむい冬の朝の石橋がこの道
○窓を開けると海近所の人の芋畑に足あと
○乳房がゆれている青い風
○ぜんぶもっていかれた葱畠
○大きく口をあけた猫の髭が長く切れている
○河骨だけがのこっている
○悲しい夕空に船岸の男の子
○歴史に名を刻み沈む日輪
○病気が申し出ている
○嫁が君と呼ばれている君よ犬が寝ている
○片目のひともいるし口切れたひともいる
○犬が見ているので脇にそれた
○耳が聞こえないという人の手が荒れていた
○猫がたくさん寝ていたので違う道を帰る
○焼きいもを買う女の人の後ろ姿
○曲がった釘と蜜柑が落ちていた不思議な日
○居るかという声が風
○花の中で寝ている昔の人自分も時代も捨てていた
○沈丁花の道案内まだ遠く
○沈丁花の好きな人の乳房あたる
○あした死んでもなにも変わらない我が身
○飛行機雲をつかまえてといふ子
○口の聞けぬ人が合うたびにくれたチョコレート菓子
○清流が見えている流れのはやさ
○人が灰になったので灰終りかと云いたいがやめた
○知らない女のテクニックそうでもない
○勉強をしなくても月が出た
○名月にうまいまんじゅうをくふ
○風がめくれてくるので逃げる
○洗ったくつが汚い
○バイオテクノロジーの洗剤靴ひも結ぶ
○そうでもない自分が風の中
○星を打つような犬の尾をみる
○きのふよってきた猫がつれない
○春を置く机に女の子であった

2020年
◯くそのような人生もコスモス
◯病人をみていた硝子瓶空になる
◯花ひらく蕾破るやうに啼いている
◯ため息とどかぬ虫の声よこになる
◯ほうたるこの指後ろ姿
◯目とじて音なく
◯みんな死んだのに始り
◯サンキューといってみた私にも苦悩はある
◯センキューといってみた私にも苦悩はある
◯ガサガサ音がする秋風あるいてもつれない
◯まつすぐな煙ションベンか
◯まつすぐな煙小便か
◯頭の良い人泣いていた両手をそろえ
◯小さな部屋が満たされている
◯毎日あると思う月もさいごも
◯雀がともだちの人しづんだり
◯明るいのに家がない
◯病人のまろみの稜蒸発せりこのみち
◯蚊と蝿のみがともだちとなる本のページ
◯蚊と蝿のみがともだちとなる本のページ数
◯美人な女のケツがきたないなめさせている
◯まっ白な米汁を夏が吸い込んで行く
◯やることもなく箸は銀河の雨
◯ぬすんだものは月とこころさようなら
◯美しい人よきりぎりす何年ぶりに会う
◯みなぎる乳房音まぶしく光る
◯乞食のくつ紐がきれいに結んである
◯病死した人も偉いそれぞれの大黒柱
◯夜明けの橋にひとり
0 +1

# by icecream69moon | 2020-09-12 21:22 | Comments(0)
2020年 09月 12日
自由律もヤらないと
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