無花果を煮た。
会社帰りのスーパーで、1kg577円。相場が分からず祖母に電話した。「まあそんなもんじゃないの」とのこと。
「砂糖は茶色いやつね、艶が出るよ」
「最後にバニラエッセンスを入れるといい」
「レモン汁もまあ、入れてもいいかもね」
他にも色々言われたけど、情報量が多くて覚えていられない。
でも、
「Kちゃん(わたしの父の兄のお嫁さん、つまりおばさん)がこの前煮た時はね、石みたいに硬くなったって。火が強過ぎたんだろうね」
ってのだけはしっかり覚えてて、弱火で、つきっきりで、面倒見ながら煮た。
煮ていくうちに無花果の独特な甘い香りが広がることとか、実から出てきた種が砂糖と水分の中に混ざって「ああこれがあの、プチプチか」って思い出すこととか、青かった無花果がだんだんと幸せな飴色に変わっていく過程だったりとか、
休日に、ひとり黙って無花果を煮るわたしはなんて幸福の塊なんだろうとちょっと泣きそうになったりもした。
無花果の甘露煮を幸せの象徴のひとつに仕立て上げたのは、紛れもなく祖母である。
出来立てを食べたのは初めてかもしれない。
熱くて、端の方だけ少し舐めて、甘さに溜息。
こんなの、すぐなくなっちゃう。
でもレモン汁、少し入れ過ぎた気がする。それに、やっぱり下茹では必要だったのかしら。
なんとなく、毎年食べてる祖母のものより雑味があるというか青臭いというか…
下茹でなんか、してたっけかなあ。
してなかった気がするんだけど。
話題:今日のおやつ
なんだかリミットを意識しているような自分に、少し怖くなった。切干大根の煮物を作ったり、無花果を煮たり、カレーにローリエを入れたり。
この無花果、きっとすぐなくなるんだろうな。