【2021年短歌12月】指冷たくて←ユニット8:00
○処女膜をなににしやうかどの花を迷わずにそらきみ孔雀草
○ガーベラの花ことばさへ知らぬ君ただその花を好きといふ君
○コスモスの枯れし頃よりラテン語の宇宙のなかに君をみつけぬ
○生チョコのアイスのごとく勧めたい恋するじかんを味わうひととき
○向かいではチョコのソフトに舌を出すもうたまらないこれが恋する
○チョコふたりバニラふたりのチョコソフト爪はピンクの挑発負けない
○薬膳のきのこスープをのむおんなピラティスかヨガわたし水炊き
○大石の彼女のしっぽが出て来ないわたし猫なのニャンとかしないと
○なかなかに彼女のしっぽが出て来ないわたし猫なのニャンとかしないと
○ドーナツの穴に聞けなき恋のことチョコになんだかどちらを選ぶ
○ドーナツの穴は地球の大きさよあなたが決めるのこれからのこと
○ハニートーストというアルバムを少しめくって頬に手を添ふ
○別れたる人は大学四年生注文したのコーヒーゼリー
○コーヒーと彼のたのんだアップルパイ文学の坂けふのぼりけり
○私たちトーストしたりパンのようたまにかまってバター乗せてね
○お互いをのぞいて見てるチョココロネいま食べないの春にゆられて
○ケンカしてふたりならんでカンパーニュ君買われるのこの春ひとり
○武骨なるパンの季節のうまそうなイケメン君とふぞろいの君
○胃袋の女王に届くこだわりの君やじかんの声と聞くなり
○自家製の青い器の上のカフェ春ふんわりと君アイブロウ
○本当はストローなんて要らないの時計だつてね要らないのかも
○何気なく留めるボタンのそれぞれの色いろいろなまぼろしの色
○春の日のスワンボートの消えてゆく東京なのに東京でなく
○どうぶつの内ののどかに午後の日の川を黙りて目のながれゆく
○外しみるボタンの孔のデザインのプラスチックの良き宝箱
○私はねずつと前からリサイクル厚みの上の層パンケーキ
○妹と良く通ふ古着の春の日の全部ならべてインディゴデニム
○ゆび元の恋も重さも月の下そういえばけふアイコンかえたの
○今どきの彼女のように繋がりてときどきなにか不自由となる
○雨の日のだれも届かぬ傘をみて汚れたくちをすすぐ雨の夜
○雨音のリズムに愛のあればこそわたしの中の雨を知ってる
○春おはる恋はダリアの君に似し窓辺の雨にいまわかれ来て
○洩る月を心の空ですくいあげ三十一文字の花で色つく
○さびしくもこころの月を空にして三十一文字を花と思えば
・・
・・
○さびしくも瞳の黒を空にして汲む星星のひとり春の日
○さびしくも瞳の奥を空にして汲む星星のひとり春の日
○寝て覚めて夢かうつつか君の涙磯にうちつく伊勢の波かな
○寝て覚めて夢かうつつかわが思ふ涙も月も伊勢の波かな
○寝て覚めて夢かうつつか伊勢の波こぼるる珠も月と見しかな
○駅にまつあるのは空と夏草のたおれて雨のあとの知るらむ
○君とぼくアニメのやうな線を引く踏み切り海のふたり下車せり
・・
・・
○いまに散る人びとの染む山桜その幹ふとくひとりたたづむ
○空萌ゆる桜の道のこのごろの雪も桜も残るこのごろ
○その身をば武家の甍にあと少し契るは君の枝垂れ桜の
○風の吹く田畑の染むるエドヒガン君名の桜下に待たるる
○霞む日の花の色そむ山桜祠の他になんぞ語らづ
○せせらぐは桜並木のそのままの曲がる思いの向こう岸かな
○いにしえの春風さそふ山桜越ゆるも道の命なりけり
○下萌ゆる空に残るは雪の陰見渡す山の春は今より
○幾重にも桜の道の霞たる列車に君の姿はななく
○風つよく桜並木の霞たる花さそはれて君おぼろなり
○忘られぬ人の名前のさくらとは花はしらねど身にまとひけり
○君の見つ桜のおくの島々の戻る桜の大木の下
○馬も見ついまは根元のやはらかくゆく人の見つ大山桜
○やまの田のなにを思ふか山桜朝霧にたちその身うつして
○君のいぬ今年のけふのしだれたる桜の花の春をながめむ
○ちる春をただただ白き眸にて花のレールに君も霞て
○約束の武家に染むらん山桜かすみも春のきみをのこして
○石垣のさぼりて近し若楓すはれて雲に風となりまし
○青葉ゆく五月の風も六月の風もいつぞや秋もちかしか
○月かげて肺の病の辺に咲ける愛薔薇色の青銅となり
◯うなだれて君の背に落つまほろばのこもれるやまの道もしだるる
○人妻となりし君いま髪白くすこし悲しくもなく語りぬ