*黒尾*
「・・・」
タッタッタ・・・
「(来た来た。今日は抱き付いてくんのかなー。)」
『リエーフー!』
「・・・は?」
背中に来ると思っていた筈の衝撃が来ない代わりに、俺が見たのは皐月がリエーフの名前を呼び抱き付く光景だった。
「わ!あ、北原先輩!」
『お疲れ様!今日もレシーブ練頑張ってたねー、偉い偉い。』
「へへっ、有難うございます!って言うか先輩、前にも言いましたけど抱き付くなら前から来てくださいよ。」
『いやー、前からはちょっと・・・流石に人前で恥ずかしいし。』
「大丈夫ですよ!前も後ろも変わりませんって!!」
『そ、そうかなー?』
「そうですよ!」
「・・・」
・・・おいおい何だこれ?
唖然としてその光景を見ている俺のことなんかガン無視で、目の前の二人は楽しそうに会話をしている。いや、いちゃいちゃしているようにも見える、が、先輩後輩のコミュニケーション的なアレだろう。にしても少し近づき過ぎやしないか?つーかリエーフ、そこは俺のポジションだ変われ。皐月も皐月で何照れてるんだ。
そんな事を考えてる俺を未だに無視し、二人の会話は更に続く。
「そういえば先輩、作ってきてくれました?」
『うん、ちゃんと作ってきたよー。はい、お稲荷さん!』
「え!?え!?マジですか!?これ本当に先輩の手作りですか!?」
『勿論。リエーフの為に腕を振るわせて頂きました。いっぱい食べてねー。』
「わー、有難う御座います!じゃあ早速、頂きまー、」
「はいちょっとストーップ。」
『あ、黒。』
「あ・・・何ですか黒尾先輩。」
おい。何ですかじゃねーよリエーフ。皐月も、今俺の存在に気付きましたって顔しやがって。
ってか、
「皐月ちゃんちょっと。」
『え、私だけ?』
「リエーフの為に頑張って作ったお稲荷さんって何ですか?」
『そのまんまだけど、何?』
「・・・俺はそういうの、お前から一度も受け取った事ないんだけどなー。」
『うん、そうだね?』
「・・・」
いやいやいや。
うんそうだね?じゃなくて。
俺の言いたい事流石に分かるだろ。わざとか?
「・・・俺の分は?」
『黒の分?ないよ?』
「何で?」
『何でって言われても・・・ってか、何で私が黒の分を作らないといけないの?』
「は?何でって、」
「ちょっと黒尾先輩!俺の彼女に手作り要求しないで下さい!これは彼氏である俺の特権なんですからね!!」
「リエーフ煩ぇ。」
ってか何言ってるんだこいつ。お前の特権じゃねーよ。
少しイラつきながらリエーフを見た後、皐月を見たら心配そうな顔で俺を見てきた。かと思えば
『黒、大丈夫?きっと主将の仕事と練習で疲れてるんだね。』
「きっとそうですよ!黒尾先輩、あっちで休憩してきたらどうですか?」
『そうだね、それが良いよ。リエーフ、邪魔にならないように向こうに行こっか。』
「はい!」
「おい、ちょっと待て!」
「ちょっとまっ!・・・って・・・ってー・・・」
・・・夢かよ。
ふざけんなよ変な夢見せんなよ。
まぁ途中から変だとは思ったけどよー。
おまけ
『おはよー。』
「はよー。」
『今日も暑いねー。』
「そうだなー・・・」
今朝見た夢を思い出す。ないとは思うが・・・
「なー。」
『ん?』
「お前さ、今日お稲荷作った?」
『・・・え?何で?作らないよ。』
「だよなー。」
『え何?何かあった?作らなきゃいけなかった?』
「いや作らんでいい。」
そして今朝見た夢のことを皐月に話したら爆笑された。
『な、何で私がっ、リ、リエーフの為にお稲荷さん作らなきゃいけないのwww』
「ですよねー。」
あぁ、何ていうか、夢で良かった。