ずっと悩んできたし、これからもうまくいかないんだろうけど、ちょっとそんな自分が誇らしく思えるようになってきた。
どうせ悩むなら、どうせうまくいかないなら、その中でどう美しくいられるか考えた方がいいね。
薬にも毒にもなるような面白みを掴みたいね。
価値観が違えば、正義も異なる。
優先順位が違えば、手段も異なる。
知能レベルが違えば、出す答えも異なる。
着眼点が違えば、到達点も異なる。
このことを、理解出来ない人間も山ほどいる。
保身のためには他人を攻撃することを躊躇わない人間もいる。
目の前の安定のためには真理をねじ曲げる人間もいる。
表面の優しさを最優先する人、本質を見出だそうとする人。
解り合いたい人、屈服させたい人、関心のない人、一定の距離を置きたい人。
様々がいて、それぞれの主張があって、うまくいかなかったり、少しだけ解るようになったり。
ただひとつ僕が譲れないこと。
解ってもらえないからと言って、それを強要するのだけは違う。
解ってもらいたいけど、皆解ってもらいたいのだけれど、だからこそ、相手を攻撃したら余計解ってもらえなくなるんだよ。
もっと寂しかったり、悔しかったり、腹立たしかったり、悲しかったりするだけなんだよ。
傷付けるより傷付けられた方がましだと思った。
優しい性格だからでも良い人間だからでもない。
嫌なことをされることはとても辛いけれど、自分に非がないのならば何も後ろめたいことはなく、周りの人間から同情を引くことが出来る。
逆に人を傷付けることは非難され、槍玉に挙げられる。
どうせ傷付くのであれば、虐げられて泣いている方が良いね。
取り返せない罪を償うより、不当に侵害された罪を追求するの方が良いね。
聖人君子になれないのならば、せめて醜いものに蓋をしていたい。
誰にも触れさせず、責められず自分だけが汚れていればいい。
唇の内側で渦巻いていた言葉は今、人の耳に届き時にその深くまで落ちていく。
燻っていた至高の喜びは形に成り声援を得て、更にその次へと繋がり広がっていく。
人はひとりで生きられないから辛いのだと、或る本で目にした。
ひとりで生きたい訳でもなく、誰かと生きたい訳でもなかった。
只心の底から幸せと感じたかっただけだよ。
この苦しみを無駄にはしないと泣いた。
何に負けてもそれだけは守った。
僕が変わった訳でもなく、誰かが変わった訳でもなかった。
出会うべき人と出会った、只それだけで、嗚呼。
自分が本当に素晴らしいと思うものを手離さないでよかった。
自分が本当に脱ぎ捨てたいと思っても落とせなかったものを愛せてよかった。
そんなものを誰かに愛されてよかった。よかった。
内側の思いは外側に。
自分が思うより遠くへ連れていってくれる。
揺らいだ僕を、あなたが見付けてくれたから。
あなたが導いてくれた先が、今この場所だよ。
誰もそんなことわかりゃしない。
わかりゃしないね、僕とあなたとのふたり以外は誰も……。
何故って聞かれても、答えるのはなかなか難儀だ。
うまい台詞でも返しておくのもいい。
すべて説明するも悪くはない。
ただ、僕の中でこれという正解を探している。
あなたに頼らず探し出そうとしている。
そして、この先で変わりゆく自分にも気付き始めている。
それでも幼いときの僕も、這いつくばっていた僕も、僕と一緒なのだ。
残念ながら、嬉しいことに、同じ人間であるのだ。
バラバラに見えるそれぞれも、背中越しに絡み合っているのだ。
君にはそれしか見えないかい?
そうだね、時は流れる……。
矛盾しているように点在するそれぞれも、視点を変えたら奥行きになるのだと、悩む彼女に伝えよう。
深みになるのだと。
そうして生きていくのだと。