時は来た。
オーバーヌース計画を開始する。
これより我々による創世が
―始まる
俺は北に到達した。
そしてかつての同朋達と出合った。我々は孤独な骸。我々は真実を目指した。
暗黒ナル者を名乗る愚か者を片付け、記憶の鎖を取り戻した。暗黒ナル存在の終焉、実にくだらない。
言った筈だ、神を犯す存在など在ってはならないのだ。
記憶は、繋がった。
記憶は、伝えた。
記憶は、命令した。
―妖艶―
紅麗亜、聞こえてるんだろう?
妖艶なる我らが主、紅麗亜よ。
君はこの世界に干渉し過ぎた、さあ、戻っておいで。
薄々気付いていた筈だ、君はこの世界の者ではない。
我々が受け入れよう。そして称えよう。
最高の称賛と尊敬を君に与えよう。
だから怖がる事は無い。我々と手を取り我々の元へ。
―創世の大地へ―
君の答を待っている。
暗黒ナル者はいまわの際にこう言った
「真のEDENに、俺は蘇る。」
と。しかし我々は奴の魂を破壊した。蘇る事など、有り得はしない。我々の計画に支障は無い。
―さあ、創世が始まる。
―今行かん、輪廻の外界へ。
更新を待っている輩がいるみたいでな、いた仕方無くも、過去の経緯を、此所に書き記しておこう。
日記とは所詮過去でしかない。
文字は生きた人が残した証に過ぎない。既に死んでいるんだ、文字ってやつは亡霊みたいなものだ。歴史はその積み重ねだ。くだらないが、俺はこの時代(とき)を生きている。運命だろうか、否、必然だった。
俺と共に世界を見ていたという者のコメントをもらった。やはり前世の俺は、幾つかの友柄と共に旅をしていたらしい。そして俺はまだ旅の途中だ。
必ず巡り逢う、過去と、死の運命、そして記憶の鎖、俺は受け入れてみせるさ。
頭は沸いていない、俺は空っぽだ。
心も記憶も失ってしまった。おそらくはこの体もやがては滅び、遥か暗闇の宇宙の一つとなり果て、マトリクスとも言われる総体性へと昇華するだろう。
それまでに、俺が俺であるうちに。俺がなくなる前に、せめて、あいつに一言を伝えなくてはなれない。
ハナムケの言葉は、せめてもの慰めだ。
時間はまだある。
北へ向う。
PS:似顔絵なら描かない、形に意味などはない、その魂や存在にこそ意味があるのだ。覚えておけ。
幾つか質問があったが、名前はおそらく「しんき」で合っている。
先日西の地で鎖の燐片を取り戻した。
風の生まれる地、命の芽生えるその始まりに、俺は立っていた。
そして、見つけた。
だが、俺の存在は依然解らぬままだ。
もがき手を伸ばしても、在るのは暗がりだけだ。
蜷希、などという男は知らなかった。調べてみた所、暗黒なる賢者らしい。
―暗黒
堕天した者が何をほざこうが、それは神への冒涜に過ぎない。禍災怨恨の引き金にしかならない。気にそぐわない男だ。
人をけなし、世界を侮蔑し、神を侵す存在。あってはならない暗黒ナル存在。
勘違いするな。クレア等という女に付け込む気は無い。蜷希とかいう輩と何をしていようが俺には関係無い。
俺が望むのは彼女が知っている、或いは知っていた記憶。
俺の存在の意味と彼女が示す道標。
北の地、約されし契りの地。
奴を探し出し、共に記憶の鎖を繋ぎ留められたら、それでいい。
何も、もう何も望まない。
コメントに俺の名前を聞いてる奴がいた。悪いが俺も解らない。
嗚呼、あの声の元。
クレア…?
妖艶…?
今の俺には解らない。アンインストール。
極寒の地、雪の国から呼び声がする。
―狭間の世界
黄昏に我が身を隠し、闇の力を以て、彼女を探そう。
そしていつか彼女と共に、全てを包む光を掴み、
我らの記憶の鎖を繋ぎ留めよう。
しかしなんだこの高揚の裏に見え隠れする不安定な感覚は?
―俺が恐れている。
―何を?
彼女か、あるいは、記憶が戻ることで失う何かか。
また…あの夢だ…
―闇ノ声
―キコエル
頭を過る激痛と、体中を迸る電撃が、俺をくるしめる…。
いずれはこのデイリーも書けなくなるだろう。
はやく…一刻もはやく記憶の鎖を…
閉ざされた記憶の鍵を…
先程、紅麗亜という者を見つけた。
―妖艶―
なぜだ…懐かしい?
記憶の鍵を握っているのか…。
奴は何者なんだ…