ゼノク研究機関及び複合施設はスケールだけなら本部よりも大きい。
研究施設・メインとなる本館・隣接する組織直属病院・東館・西館・居住区とある。組織用の宿泊棟もある。
ゼノクは怪人による後遺症治療施設も兼ねてるため、入居者用の居住区も完備されている。
一見すると福祉施設にも見えるがそうじゃない。怪人被害に遭った者の中には、自ら被験者としてゼノクに行く者もいる。
ゼノクはかなり複雑で、後遺症のレベルによっても区分けされている。特に病院の怪人被害専門病棟は常に患者がいる。
入居者達は分け隔てなく交流しているが。
そんなゼノクに元元老院監察官の桜井流葵(るき)がいた。
流葵は約6年もの間、異空間で洗脳された影響でたまに「元老院に戻して」と懇願する時があるがだいぶ落ち着いてきた。だが、元老院の証である白い仮面は未だに人前では外せずにいる。
外したいのに、外せないのだ。
西澤は彼女をあえて仮面を外さないで治療する方針にした。無理やり外したら嫌がるだけ。拒絶なんてされたら何も出来ない。
西澤は鼎の例を元に流葵の治療を進めている。
そんな流葵とよく話す職員がいた。紬原(つむぎはら)だ。
紬原は流葵に親身になっていた。
「そっか。紀柳院さんに会いたいのかー…。リモートはこないだしたんだよね」
「はい。ですが直接会いたくて…。私、まだ人前で仮面外せそうにないし、色々と聞きたいんです」
元老院の仮面の掟はしぶといなー。あれからそこそこ経つのに、彼女は人前では仮面姿のままって…。
もう1人の伊波さんも迷い人で、元老院で監察官候補にされた挙げ句、強く暗示をかけられたんだよなぁ。伊波さんはそろそろ仮面外せそうだけど、元老院…絶対怪しい。
ゼノク・司令室。
蔦沼はあることに気づく。
「元老院の次のターゲット、まさか僕なわけないよな〜。いや…でも鳶旺(えんおう)のことならあり得るか」
「どうしたんですか、長官」
「あ、南。ゼノクの防衛システムすぐに起動出来る状態にしといてね。シールド張れるでしょ?」
「いつでも可能ですよ」
「もし、元老院が攻めてきたら僕が直接戦うしかないじゃない」
ちょ、な…何言ってんの!?隊員を差し置いてその発言はちょっと…。
「長官、ゼノクに本部から数名派遣させればいいのでは?腕の立つ隊員を」
西澤が提案する。
「確かにゼノク隊員はゼノクの守備には強いけど、うーん…ちょっと考えてみるね」
その軽いノリ、どうにかならんか…。
異空間。元老院本拠地。
鳶旺と絲庵(しあん)は釵游(さゆう)を呼び出す。
「釵游、君はこれからこの施設に行って貰えるかな?『ゼノク』にだ」
「ゼノク…ですか?」
「どうやらここに蔦沼がいるらしいんだよ。手段は問わない。そいつを引き摺り出してやるがいい」
「御意」
釵游は姿を消した。釵游は冷めている。
なんで俺があいつの命令に従わなければならないんだよっ!元老院の力が強いから逆らえない…。
鐡はどこにいる?
釵游はうろうろしていると、いつの間にか鐡が。
「釵游、俺に助太刀かい?」
「鐡様?」
「元老院には一切手は貸さないが、お前には協力してやる。元老院から離れたいんだろ?杞亜羅(きあら)も離れたいと言っていたからね。これでほぼ決まりだろ。
…今回の『ゼノク』の戦いは俺が絡むがお前らは干渉すんなよ。これは俺とジジイとの代理戦争のようなもんだ。もしかしたら暁にまた会えるかもしれねーからな」
鐡は楽しそうにして消えた。
これを物陰から見ていた者がいた。元老院副官の絲庵。
鐡は絲庵と一体何を話していたんだ…?
絲庵、疑心暗鬼になる。
鐡は鳶旺様を嫌っている。とても双方が衝突するとは思えないのだが、鐡は幹部を介する可能性が出てきた…。
鐡は読めない奴だ…。